意識の状態を測るベッドサイド装置

本知財は、意識の状態をベッドサイドのわずか10分間で計測・評価できる装置。意識障害に陥った患者(外傷・脳卒中により脳損傷を負った患者、昏睡(*1)・植物状態(*2)にある患者など)がどの程度意識を持っているのか、脳波(*3)と数学の方法論を介して評価する。今までにもfMRI(*4)を用いた研究で、こうした患者に「ある程度の意識があるのではないか」と考えられていたが、コストやアクセスの問題から十分な症例数での検証が難しく、観察眼に頼るがゆえに植物状態だと誤診された事例もあった。一方で意識の状態を測るベッドサイド装置は、意識とシンクロする脳部位の活動パターンをネットワーク分析し、意識レベルを定量評価する。ローコスト&ポータブルである強みも相まって普及が進み、診断精度の向上に貢献することが期待されている。
(*1) 昏睡:重度の意識障害で、外部刺激に対する反応が失われた状態。脳損傷によって昏睡に至ることがある。
(*2) 植物状態:昏睡が長引くと植物状態に移行することがある。表情変化や睡眠&覚醒のサイクルは保たれ、外部刺激で開眼することもあるが、周囲環境の認識や意思の疎通が極めて困難な状態。
(*3) 脳波(EEG; Electroencephalogram):脳の活動電位を、頭部に貼り付けた電極で記録したもの。
(*4) 機能的核磁気共鳴画像法(fMRI; functional Magnetic Resonance Imaging)

開発者のスリヴァス・チェンヌ氏によると、認知や意識の正体は脳の領域間で相互作用し合う「複雑ネットワーク」(コネクトーム)なのだという。