No.920

2024.09.30

洗剤を使わず“水”で洗う洗濯システム

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概要

「wash+(ウォッシュプラス)」とは、洗剤を使わずにイオンの力で汚れを落とす洗濯システム。合成化学物質を含まず、99.9%が水で構成されたアルカリイオン電解水「wash+Water」で汚れを取り除いて、洗浄・消臭する。通常の洗濯とは異なり、化学物質を一切使っていないため、肌が弱い人でも利用可能で、すすぎ時の水使用量の削減や、洗浄排水による環境負荷の軽減ができる。ヘルスケアしながら持続可能な環境を形づくる、人と地球に優しい洗濯のあり方として、国内外へのさらなる展開が期待される。

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なにがすごいのか?

  • 洗剤を使わずにイオンの力で汚れを剥離・分散

  • 無味・無臭で合成化学物を含まず、人と環境に優しい

  • すすぎ回数削減で水使用量と洗濯時間も削減

なぜ生まれたのか?

きっかけは2011年3月に発生した東日本大震災だった。wash-plusの代表・高梨健太郎氏は当時、不動産事業を営んでいたが、地元で液状化現象による地盤沈下が発生。災害ボランティアとして活動する中で、新事業の立ち上げを決意し、人の役に立つ事業としてコインランドリー事業の検討を始めた。事業化を模索する中、自身の子どもの肌ケアからヒントを得て、肌に優しい洗濯を発案。アトピー性皮膚炎などで洗濯に苦慮している人たちの存在も知り、事業化に向けた取り組みを始めた。
事業化にあたり、当時工場で油汚れを落とすために使用していたアルカリイオン電解水に着目。洗濯に適したアルカリイオン電解水の配合や、ランドリー機器の企画開発、洗濯工程などの検討を重ねて「wash+」を構築。独自の洗浄システムは複数の特許を取得している。IoT化も進めており、専用アプリなどによるユーザーの利便性向上や、デジタル化による稼働効率の向上も図っている。

実現事例 実現プロジェクト

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wash+ comfort

「wash+ comfort」は、星野リゾートと共同開発したホテル内設置用のスマートランドリー。協働プロジェクトを立ち上げ、洗剤を使わずに洗濯でき、アプリで運転状況の確認や決済が可能な、ホテル向けシステムとして開発された。従来のホテル内洗濯機は、品質表示のない洗剤が自動投入されるタイプが多く、また空き状況や動作完了などの運転状況は現地確認が必要で、硬貨で使用するなどの不便さもあったが、「wash+ comfort」はそれらの課題を解消する。
2021年11月から、星野リゾートが運営する「OMO5京都祇園」でトライアル運営を実施し、2022年2月には「星野リゾート 西表島ホテル」で本格運用を開始。宿泊者のランドリー利用度が高い、都市型ホテルを中心に設置ホテルを増やしている。また、他ホテルへの展開も進めており、2023年11月には「東京ベイ潮見プリンスホテル」に導入している。

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なぜできるのか?

洗濯洗浄のために配合したアルカリイオン電解水

アルカリイオン電解水「wash+Water」は、極微量の無機電解質と水で生成している。大学と共同で洗濯に適した配合を研究し採用した。無機電解質は水に溶けると正と負のイオンに分かれる性質を持つが、アルカリイオン電解水のマイナスイオンが汚れを取り囲んで、物体のプラスイオンを吸収し、汚れを剥離・分散させる。アルカリイオン電解水は、油脂をグリセリンと脂肪酸に分解して石鹸化する作用もあり、界面活性の効果でも汚れを落とす。汚れを浮き上がらせる効果や、汚れを細かく分断・分散する効果も持つ。特に皮脂汚れに強く、高い洗浄力を発揮する。

専用ランドリー機器の構築

アルカリイオン電解水による洗濯専用の機器を構築している。強アルカリイオン水を貯留・給水・制御する仕組みを備えており、洗浄に適した量を洗濯槽に供給する。機器製作は、コインランドリー機器の国内メーカーである山本製作所の協力を得て実施している。
機器は専用アプリと連携しており、予約管理・運転終了通知・キャッスレス決済などが可能。洗濯時のオートロック機能もある。また、貯水量や給水状況などはセンサーと通信網を介して管理可能で、運用・保守もしやすいシステムを構築している。

相性のいい産業分野

生活・文化

人・環境の負荷低減を追求した高洗浄力な洗濯システムの活用

製造業・メーカー

業務用のがんこな汚れに対応する環境負荷の低い洗濯システムの開発

旅行・観光

宿泊施設のランドリーへの設置や、寝具などの洗濯用に活用

環境・エネルギー

自然保護地域など環境保全が特に必要なエリアに設置

AI

洗濯物の汚れに合わせてアルカリイオン電解水の配合を変えるAIの開発

この知財の情報・出典