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2023.05.30
知財ニュース
Adobe、”隠れARデータ”を紙に埋め込む電子透かし技術を開発─家庭用プリンターで印刷可能

米Adobeの研究機関であるAdobe Researchは、インクジェットプリンターを用いて紙にARデータを埋め込める電子透かし技術を開発した。
赤外線吸収(NIR)インクを用いて人が目視できないARデータを紙に仕込む技術で、スマートフォンのカメラをかざすとARコンテンツが表示される。ARデータは、一般的な家庭用のインクジェットプリンターで埋め込み印刷できる。
これまで用いられてきたQRコードやアプリで閲覧するARとは異なり、インターネットのアクセスを必要としない。紙に近赤外(NIR)カメラをかざすだけで即閲覧できるため、研究者らは同技術を「StandARone」と名付けている。
本技術を用いれば、クリエイターは、QRコードなどを紙に反映する必要がなくなり、デザインを変えずにARコンテンツを導入できる。
埋め込みデータの作成には、専用のオーサリングユーザーインターフェースを用いる。紙をインポートした後、テキストや吹き出し、ボタンやスライダーなどを設定し、各コンテンツのインタラクション動作を定義して、ARにコンテンツを追加する。
ARコンテンツは、エクスポート時に自動的にウォーターマーク(透かし)に圧縮されてファイル化される。それをインクジェットプリンターで印刷する形となる。
印刷時は、タンクの1つにNIRインク(近赤外線吸収インク)を入れて行う。研究ではEpson ST-200を用い、黒のタンクにNIRインクを充填して印刷。黒色の印刷は、シアン・マゼンタ・イエローのインクを混合して行ったという。
閲覧の際は、スマートフォンのIR(赤外線)カメラを紙にかざして電子透かしを読み込むと、ARコンテンツが表示される。
例えば、レストランメニューの料理説明などに利用できる。説明だけでなく、栄養成分を表示させて、個人のカロリー目標にあった食事をフィルタリングするなどの活用も可能という。その他にも、論文の補足情報や、学習テキストのヒントを表示したり、商品パッケージなどへの展開も想定している。
現状では2Dの視覚コンテンツしか作成できないが、今後は、3Dコンテンツや音声・アニメーションなどのマルチモーダルコンテンツにも対応させる予定という。
その先には、ARグラスとの連携も見据えている。研究チームは論文の中で、Microsoft HoloLensのような、低解像度のNIRカメラが内蔵されたARヘッドセットに実装する計画があると述べている。今後の進展により、デジタルとリアルのシームレス化が加速すると期待される。
論文「StandARone: Infrared-Watermarked Documents as Portable Containers of AR Interaction and Personalization」
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Top Image : © Adobe Research