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2022.08.09
知財ニュース
ALS患者の目の動きで演奏する世界初のパフォーマンス、カンヌライオンズで称賛のスタンディングオベーション
Dentsu Lab Tokyoは、2022年6月24日に行われた「2022 カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」にて、さまざまなバックグラウンドを持つ人々とともに、その視点やクリエイティビティの力を借りて、誰でも表現ができるためのツールや環境づくりを目的とした「ALL PLAYERS WELCOME」プロジェクトの始動と、新たなプレイヤーを生み出すためのオリジナル操作UIの無償提供を行うプラットフォーム「ALL PLAYERS TOOL LAB」を公開した。
その第一弾として、ALSという難病を抱えながらアーティストとして活動する武藤将胤氏とコンポーザーのPONE氏と共に開発した、目の動きのみでライブ演奏ができる3種のツールを利用し、3ヶ月間の制作を経て世界初のコラボレーションライブパフォーマンスを披露した。
Dentsu Lab Tokyoは、2017年に開始した「PARA-SPORTS LAB」をはじめ、さまざまなバックグラウンドを持つ人々と共に社会課題の解決や、あたらしい表現方法について模索している。
その過程で、障がい者のクリエイティビティにおける可能性と社会の課題を感じ、すべての人が自由な表現ができる環境作りを目的とした「ALL PLAYERS WELCOME」の始動を宣言。セミナーでは、SLOW LABEL代表の栗栖良依氏と共にすべての人がプレイヤーになる社会が持つ可能性を熱く語り、武藤氏、PONE氏とともにライブパフォーマンスを実施した。
パフォーマンスのトップバッターを務めた武藤将胤氏は、東京会場からリモートで繋ぎ、新開発したUIの「EYE XY EYE pad」を使用しながらライブ演奏を行った。「EYE XY PAD」とは、アーティストでもある武藤氏とPONE氏が作曲した音やエフェクトをX軸、Y軸の座標に配置し、目の自由な動きを最大限利用して、目線でこれまでにないユニークな演奏をする装置だ。
会場の画面に映し出された武藤氏の目線が描く軌道と刻々と変化する音楽で、二度と同じ演奏はない、唯一無二のパフォーマンスを行い、会場にいた観客に新たなクリエイティビティの驚きと可能性を与えた。
PONE氏は武藤氏からのバトンタッチを受け、オンラインライブの課題である遅延を逆手にとり、UIそのものを遅延と同期した動きをつけることで、どのような遅延が起きても、規定の枠に目線を送ることでタイミング良く自由なエフェクトを追加することができる「SHOOTING PAD」により、ダイナミックなパフォーマンスを披露。
次々と表示されるエフェクトの枠とPONE氏の目線から生まれる美しい軌道のビジュアルにより、観客をパフォーマンスに引き込み、フィナーレに向け会場の盛り上がりを一層高めた。
パフォーマンスの終盤では、カンヌ会場に女性シンガーが登場し、武藤氏とPONE氏による演奏に乗せて、エネルギッシュな歌声を披露。英語と日本語で歌われた「違い、認めあい、支え合い、未来」という歌詞と共に、会場は一体となり大きな盛り上がりを見せた。ラストシーンは、武藤氏とPONE氏が目線で描いた「KEEP PLAYING」という文字が映し出され、すべての人がプレイヤーになれるという力強いメッセージを発信。
パフォーマンスは会場全体を魅了し、3分を超えるスタンディング・オベーションによる称賛を受け、大盛況のうちに終了した。
Top Image : © Dentsu Lab Tokyo