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2021.11.17
知財ニュース
バッテリー稼働で自律運転が可能なMITの水上タクシー「Roboat」、アムステルダム運河で航行を開始
MITのコンピュータ科学・人工知能研究所とMITのセンサブル・シティ・ラボラトリーの研究者たちは、自律的に水上航行する自動運転型のロボットボート「Roboat(ロボート)」の開発を進め、アムステルダムの運河で現地時間10月28日、初航海を行った。このボートは5人が十分に乗れるほどの大きさで、開発チームは旅客輸送のほか、廃棄物の回収や商品の輸送などの、普段人間が操縦するボートで行っている作業にも使えると考えている。
Roboatは、トップデッキを交換することによって、さまざまな用途に合わせて活用できる構造となっている。フェリーとしての旅客輸送や、家庭ごみの収集、自律的な荷物搬送などのほか、Roboatを連結して仮設の橋や水上イベントステージを作ることが可能。完全に電気のバッテリーで稼働し、最大10時間稼働する。ドックに収まっている時にはワイヤレスで充電が可能で、10時間の運行に十分なバッテリー電力を搭載している。
Roboatは最大6人の乗客を乗せ、フェリーとして固定ルートで街中を自律移動することが可能。自己学習で走行ルートを見つけ自律走行する。ナビゲーションは一般的な自動車のカーナビと同じように、GPSを使って現在地から目的地までの安全なルートを決定する。LiDARセンサー(光による検知と測距)と360度の視界を可能にする多数のカメラの搭載により、衝突を回避することができる。
Roboatは、都市部での家庭ごみの自律的な搬送への活用も想定されており、研究者の調査によると、このシステムはアムステルダムの70%のごみの集荷をカバーすることができるという。現在配備されている大型のゴミ収集車の必要性を削減し、市内の交通量を減らすことができ、渋滞、汚染、騒音も軽減することができるとしている。
またRoboatは、ユニットを連結して別のRoboatに接続ができるため、Roboatを接合し、一時的な橋を形成して水上都市のインフラストラクチャの形成や、イベントでの水上フローティングステージの作成が可能だ。
アムステルダムメトロポリタンソリューション研究所のArjan van Timmeren教授は「環境センシングも探求しているので、水中の病気を早期に検出できたり、Roboatを使用して運河から水路の廃棄物を取り除くことができる」と語っている。
プロジェクトは、旅客輸送、廃棄物収集、調査・監視アプリケーションなど、テクノロジーの商品化に向けて開発を進めている。今後は、機械学習を利用してオンラインでのパラメーター推定や、ボートの上に物体が置かれたときにアッパーデッキの構造を動的に変化させる適応制御装置の開発も進めていくという。最終的には、運河だけではなく、潮流や波などの水環境での航行も目指すとしている。
Top Image : © Massachusetts Institute of Technology