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2024.11.11
知財ニュース
日本の研究チーム、月の表面から月の水資源を推定する新技術を発表
理化学研究所、量子科学技術研究開発機構、立命館大学、聖マリアンナ医科大学らの研究チームは、月表面から漏れ出してくるエネルギーの異なる中性子の測定を組み合わせることで、月の表層下に存在するとされる水資源の量と深さを同時に推定できると発表した。
月の表層に水資源が見つかれば、その場で採掘して利用することができ、飲料や洗浄に使用するだけでなく、水素と酸素に分解して燃料や呼吸用の酸素として使うなど、人類の宇宙進出に大きく貢献することができるとされている。また、月の水の起源の解明は地球での生命環境の形成を知る上でも重要な手がかりとなるとも言える。
月の水の資源利用や起源解明のためには水の採取が必要だが、水を採取するには月面ローバーなどを用いて掘削する必要があった。
そこで、研究チームは、銀河宇宙線が月面に衝突すると発生する中性子に着目。銀河の中を漂って地球や月に降り注ぐ銀河宇宙線が月面に衝突すると、地下の数十センチメートルで土壌中の原子核を破砕し、中性子が発生する。
飛び出した中性子は100万電子ボルトほどのエネルギーを持つが、地中から月面まで漏出してくる間に地中の物質に衝突(散乱)して、エネルギーを失った中性子となることがあり、水が存在すると中性子はより効率的にエネルギーを失って表面から出てくる。
研究チームは、銀河宇宙線が月面に衝突した後に起こる物理素過程を詳細にシミュレーションする枠組みを構築し、月環境における月土壌の含水率、含水層の厚さ やその深さ、土壌の温度など、月の水の存在形態をさまざまに変えて、月面から漏れ出す中性子の強度について数値計算を繰り返した。
その結果、地下に隠された水の存在量や深さを推定できることが確認できた。これは、月面下の水の存在状況を遠隔で推測できることを示しており、今後の月面探査の計画への応用が期待できるとされている。
また、月面ローバーに搭載して月の水資源を探査するための放射線モニタ「Moon Moisture Targeting Observatory(MoMoTarO)」の開発が京都大学、理化学研究所、立命館大学などを中心に進められている。立命館大学では、月面の土壌組成に調整した模擬土壌によって月面に近い環境を作成し、この放射線モニタで実証試験も実施。研究チームは、2026年に国際宇宙ステーションでの宇宙実証試験を目指している。
Top Image : © 京都 大学