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2025.08.04

知財ニュース

山形大学とIBM、「ナスカの地上絵」248点を新たに発見―AIを調査に活用、“物語”性も示唆

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山形大学とIBMは、世界文化遺産「ナスカの地上絵」を新たに248点発見した。人工知能(AI)を活用した調査によるもので、2025年7月28日に大阪・関西万博のペルー館で発表。今回の発見で、具象的な地上絵は計893点に及ぶという。

山形大学らはまた、発見した地上絵の多くは、小道に沿ってテーマごとに配置されたものと見ている。例えば、神官や斬首の場面、猛禽類、リャマなどをモチーフに地上絵を描いており、小道ごとに「人身供犠(じんしんくぎ)」や「野生の鳥」、「家畜」といったテーマを表現していると想定。物語やメッセージを伝える目的で、意図的に地上絵を構成した可能性を指摘している。

つまり「ナスカの地上絵」は、単なる装飾や芸術作品ではなく、「共同体の信仰や記憶の継承と結びついた文化的な営みの一部として機能していた」と考えられるという。

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山形大学は、2012年にペルー・ナスカ市内に「ナスカ研究所」を設置し、地上絵の調査に取り組んできた。従来、主に用いていたのは人工衛星画像・航空写真・ドローンなどのリモートセンシング技術。621点の地上絵を発見したが、約400平方キロメートルの広大なナスカ台地で現地調査や目視確認に時間を要していたという。

調査を加速させるため、IBMと提携し2018年頃より共同研究に着手。同社のAI技術を活用し、少量のトレーニングデータでパフォーマンスを出せるAIモデルを開発した。

今回の調査ではまず、AIの画像解析で1,000点以上の地上絵候補を検出。検出結果をもとに、2023年から2024年にかけて現地調査を行い、新たな地上絵248点の発見に至った。地上絵の配置については、既知の小道に描かれた地上絵も含めて検証。いずれの小道にも一貫したテーマ性を確認したという。

山形大学らは今後も、未調査の500点以上の地上絵候補をもとに現地調査を進める予定。またAIの画像認識やパターン分析を用いて、各小道のモチーフの配置や構図の反復パターンを抽出・分類し、地上絵の物語やメッセージの解読に取り組むという。

ニュースリリースはこちら
山形大学・関連プレスリリース(2024年9月)
「山形大学ナスカ研究所」公式サイト

Top Image : © 国立大学法人 山形大学

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