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2024.01.26

知財ニュース

ヒトの胎児の脳細胞から「ミニ脳」の培養に成功─オランダ研究チーム、「脳オルガノイド」の作成を発表

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オランダ・ユトレヒトのプリンセス・マキシマ小児腫瘍センターとヒューブレヒト研究所の研究者らが、中絶されたヒトの胎児の脳から「脳オルガノイド(ミニ脳)」を培養することに成功したと発表した。また、今回発表された論文は2024年1月8日付の学術誌「Cell」に掲載されている。

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オルガノイドとは、ヒトの細胞を試験管内で培養した3次元の立体的な構造の小さな臓器だ。様々な臓器からこれまでオルガノイドを作成していたが、脳のみヒトの脳細胞から直接オルガノイドを作成することはできていなかった。

作成されたミニ脳は米粒ほどのサイズで、ヒトやヒトの祖先などの発達した脳に存在する「外側放射状グリア」が多いことも特徴だ。

iPS細胞を用いた脳オルガノイドの作成もしていたが、iPS細胞は脳の様々な部分の細胞になるように誘導しなければならないのに対し、脳から直接採取した組織は、特定の発達段階を正確に捉えて適切に成長したという。また、ミニ脳は足場となる「細胞外マトリックスタンパク質」を自力で作成もできたのだという。

今回、研究チームは、匿名かつ無償提供のドナーから提供された、妊娠12週から15週の胎児の脳組織を採取。栄養素と成長因子を用いて作成してから4~8日後、組織的な外観の3次元構造のオルガノイドに成熟したことを確認した。

同チームは、このミニ脳を脳腫瘍の研究に使用できるのかを実験。遺伝子編集技術「CRISPR-Cas9」を使い、がん抑制遺伝子「TP53」を欠損させた。3カ月後、「TP53」に欠陥のある細胞の増殖がミニ脳の健康な細胞数を超えた。これは、欠陥のある細胞ががん細胞の典型的な特徴である成長上の優位性を獲得したことを意味するのだという。

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また、ミニ脳はシャーレの中で6カ月以上増殖し続けた。これにより1つの組織サンプルから複数のミニ脳の作成ができるため、同サンプルのミニ脳を使って繰り返し実験を行うことができ、信頼性が高い研究が可能になるとしている。

研究論文

Top Image : © プリンセス・マキシマ小児腫瘍センター/ヒューブレヒト研究所

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