News

2022.08.16

知財ニュース

改造したバッタの脳で人間のがんの「嗅ぎ分け」に成功─がんのスクリーニングに期待

rick-van-houten-knc-E-jDxiw

米国の研究チームがバッタの脳を使って、「匂い」からがんを検出することに成功した。がんのスクリーニングや、デバイスの開発に発展する可能性がある新研究だという。

人間の病気の兆候を見つけるよう、動物を訓練するケースはこれまでにも存在している。動物は人間の体臭や呼吸によって、放出される化学物質を感知していると推測されており、化学物質の組み合わせは個人の代謝によって異なり、また、病気になると変化すると考えられている。

今回の研究に参加した科学者の1人であるミシガン州立大学のディブジット・サハ助教授(神経工学)いわく、「化学物質の変化は、ほぼ1兆分の1レベル」。この極めて低い数字のために、変化を見付けるのは最先端テクノロジーを用いても難しいというが、動物はそのような微かな変化を、匂いで嗅ぎ取れるよう進化してきた。

本研究では、まずバッタの脳を外科的手法を使って露出させ、次に、バッタが臭いを感じ取る触角からの信号を受け取る脳葉に電極を埋め込んだ。続いて、3種類のヒト口腔がん細胞と、正常なヒト口腔細胞を培養。それぞれの細胞から放出されるガスを捉えるデバイスを使って、それらのガスをバッタの触角へ送り出した。

F5.medium

バッタの脳は、それぞれの細胞に対して異なる反応を示したという。脳の電気的な活動パターン記録は、ある細胞のガスが触角に吹き付けられた時、他とは明確に異なる動きを見せたとのこと。この記録だけでも、その細胞ががん細胞であるかどうかを正確に識別できたという。

動物を使った研究は、倫理的な観点など、様々な課題も多い。研究結果を応用することで、将来的に昆虫を使った呼気検査が、がんのスクリーニングや、同様の働きを持つ人工的なデバイスの開発に発展することが期待されている。

論文はこちら

Top Image : ©︎ Unsplash

広告