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2022.04.21

知財ニュース

4000年以上かかる がん治療薬耐性メカニズム探索をスパコン「富岳」とAIで1日以内に短縮

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富士通と東京医科歯科大学は、富士通が開発した現場のデータから新たな発見の手掛かりを提示する技術「発見するAI」をスーパーコンピュータ「富岳」上に実装し、従来は実行困難であった2万変数のデータを一日以内で超高速計算する、1,000兆通りの可能性から未知の因果を発見できる技術を開発した。

両者は、がん医療と創薬の現場課題である抗がん剤の薬剤耐性を分析するために、がんの細胞株から得られた遺伝子発現量データに本技術を適用した結果、これまでの研究成果では知られていない、肺がん治療薬の耐性の原因を示唆する遺伝子の新たな因果メカニズムを抽出することに成功した。これにより、患者一人ひとりに対応した効果的な抗がん剤創薬の実現に向けて本技術の活用が期待できるという。

がんの分子標的薬は、患者への投与を続けると、その薬剤に対して耐性を獲得したがん細胞が増殖し、再発することがある。個人や臓器における遺伝子、その発現量などで薬剤効果は異なり、それら複数の遺伝子の発現量を組み合わせたパターン数は1000兆通りを超えるほど膨大なため、がん耐性獲得のメカニズム解明には、精緻なデータと解析技術が不可欠とされている。

富士通の開発技術「発見するAI」を用いても、ヒトの全2万個の遺伝子を対象とした網羅的な探索には通常の計算機で4,000年以上かかる試算であったため、処理の高速化が課題となっていた。

富士通と東京医科歯科大学は、プロセッサ間とプロセッサ内の並列性を特長とするスーパーコンピュータ「富岳」上にヒトの全遺伝子を実用的な時間で分析できるよう、条件探索と因果探索を行うアルゴリズムを並列化し、実装することで、計算性能を最大限引き出した。さらに、「発見するAI」を活用し、統計情報に基づき薬剤耐性を生み出す条件となりうる有望な遺伝子の組み合わせを抽出することで、1日以内で網羅的な探索を実現する技術を開発した。

両者は今後、さらに時間軸や位置データなどの多くのデータを組み合わせた多層的、総合的な分析を実施し、薬効メカニズムやがんの起源の解明などの重要課題における発見の手掛かりを提示する研究を加速するとともに、医療や創薬分野だけでなく、複雑に交錯する因子を発見して意思決定を行うようなマーケティングやシステム運用、生産現場など、活用分野の拡大に取り組んでいくとしている。

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