No.450

世界最高水準の性能と汎用性を持つスーパーコンピュータ

富岳

富岳

概要

「富岳」とは、世界最高水準の性能を持ちながら、一般的なソフトやアプリケーションとの互換性を持つスーパーコンピュータである。2020年6月には、演算速度性能・アプリケーションの実行性能・AI向けの計算性能・ビッグデータ解析性能の4部門で、世界第1位の評価を獲得。活用の際に専用プログラムを作り込む必要がなく、一般的な汎用ソフト・アプリケーションの最大性能を引き出すことができる。スーパーコンピュータの開発ではハードの性能向上が目的となりがちで、作っても使われないケースがあったが、富岳では性能と共に使いやすさを追求し両立している。富岳は、宇宙起源解明などの基礎研究、医療・創薬、防災・環境、技術開発と広い領域での活用が想定されており、社会課題の解決や長年の謎の究明、技術革新を促すと期待される。

なぜできるのか?

専用CPUの開発

コンピュータの処理・制御を担い、計算速度を左右するCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)を、理化学研究所と富士通が共同で開発。従来型のCPUでは、データを記憶するメモリやネットワークを、プリント基板(絶縁層の板に配線などを配置した部品)でつないでいる。そのため、プリント基板で処理時間を要し、それぞれの性能が高くても力を発揮しにくい状況があった。富岳では、CPU内部にCPU同士をつなぐネットワーク機能「TofuD」を設置、メモリはシリコン基板でCPUと一体化し、計算・処理速度を向上させた。富岳には同CPU が15万8,976個使われており、アプリケーションの実行性能は、前身のスーパーコンピュータ「京」(稼働当時のCPU約8万個)の最大100倍超に到達している。

汎用性を持つCPU命令体系の採用

CPUを動作させるための命令セットアーキテクチャには、スマートフォンなどに搭載されているCPUと同様のArm社仕様を採用。富岳ではArm社仕様の命令セットを応用し、独自のCPUを開発している。Arm社仕様命令セットはスマートフォンを始め、タブレットやゲーム機などで世界中で利用されており、汎用ソフトウェアやアプリケーションを動かすことができる。富岳では、使いやすさの追求の中でArm社仕様を採用し、既存ソフトやアプリとの互換性を高めている。

性能発揮・安定稼働を支える設備

CPUなどの半導体回路は、30℃を越えるとエラー発生率が上昇し計算効率が低下するため、温度管理が可能な専用設備を設計。高速計算を行う富岳のCPUからは、80kW/㎡以上(家庭用電気ストープ80台分の熱が1㎡に集中するレベル)の発熱があり、冷却しないと1,000℃超に達する。そのため富岳では、CPUの搭載システム上に、冷却水を流せる銅製の装置を設置。また、CPUで温められた水を冷却できる熱交換器を増強し、熱交換器で使う水を冷やすための冷凍機も追加で設置した。専用設備により、CPUで温められた水は配管を通って熱交換器に送られ、冷やされた水は再度CPUに戻るという、継続的な冷却を実現している。

作る側と使う側によるCo-design

富岳の開発は、ハードウェアの開発チームと、富岳を使用するためのソフトウェアの開発チームが、お互いの要望や意見を出し合いながら進める設計手法「Co-design(コデザイン:協調設計)」で実施。Co-designによって、富岳のターゲットアプリケーションの選定、特性に合わせたシステム設計、システムに合わせたユーザー目線でのアプリケーション開発などを行った。様々なユーザに対して富岳がいつでも性能を発揮できる状態を目指し、1,200回超の会議を重ねて富岳を完成させた。

実現事例

相性のいい産業分野

航空・宇宙

宇宙の起源や謎を探るシミュレーションへの活用

環境・エネルギー

地震や津波などの災害予測、天気予報の技術向上

医療・福祉

感染リスクなどのシミュレーションや創薬開発、医療技術向上への活用

資源・マテリアル

エネルギー資源の効率化や、クリーンエネルギー・蓄電池などの技術開発

製造業・メーカー

新素材の開発や、新しいプロセス・技術を活用したプロダクトの開発

住宅・不動産・建築

CPUから出る熱や温水を活用したインフラの構築

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。 詳細な情報をお求めの場合は、お問い合わせください。 Top Image : © 国立研究開発法人 理化学研究所

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