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2021.10.27
知財ニュース
キヤノン、180度VR映像の撮影・編集が可能な「EOS VR SYSTEM」を始動─12月下旬より展開予定
キヤノンは、VR(仮想現実)映像撮影システム「EOS VR SYSTEM」の立ち上げを発表した。本システムは、ミラーレスカメラとVR撮影専用レンズ、VR映像制作をサポートするPCソフトウエアで構成され、VR撮影と映像制作に活用できる。専用レンズとPCソフトウェアは、2021年12月下旬の発売・公開を予定している。
VR撮影は、専用レンズ「RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYE」を、ミラーレスカメラ「EOS R5」に装着して行う。周囲180度の範囲で3DのVR映像撮影が可能となる。専用レンズには、2つの魚眼レンズを実装し、視差(両眼で見える像の違い)を利用した3D立体視での撮影を実現する。EOS R5の8Kセンサーにより、魚眼画像で8K相当の解像度の動画を記録できるという。
また、EOS R5のカメラは、2眼レンズそれぞれから入る光をセンサーで検知し記録する。そのため、撮影前のカメラ位置の調整や同期設定、撮影後に映像を繋ぎ合わせるスティッチ作業が不要となり、効率的なVR映像制作が可能となる。
併せて、専用レンズにはキヤノンが開発した反射防止コーティングである「SWC(Subwavelength Structure Coating)」を採用。従来のVR撮影では屋外撮影の際に太陽が映り込むと、レンズ内で反射した光がゴースト(虹の様な光の楕円)として写り、撮影が妨げられるケースがあった。SWCは、特殊な反射防止膜で光の境界面をぼやかし逆光によるゴーストを低減するため、屋外でのVR映像撮影の機会を広げるという。
VR映像制作のサポートシステムとしては、2種類のPCソフトウェアを展開。PCアプリの「EOS VR Utility」と、Adobeのビデオ編集ソフト専用の追加機能となる「EOS VR Plugin for Adobe Premiere Pro」を提供する。いずれのソフトウェアでも静止画や動画をVR規格形式へ変換可能で、ユーザーは制作環境に合わせて選択できる。
キヤノンはEOS VR SYSTEMの立ち上げにより、映像クリエイターや制作プロダクション、新たにVR映像撮影を始めたいと考えるユーザーまで、幅広いニーズに応えていくという。
同社は、視聴用のMR(複合現実)用ディスプレイ「MREAL(エムリアル) S1」も手がけているが、EOS VR SYSTEMの提供でVR制作のハードルを下げる。今後の事業展開により、VR映像が身近で活用される汎用的なコンテンツになると期待される。
Top Image : © キヤノン 株式会社