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2024.10.08

知財ニュース

山形大学、AIを使用して新たに303個のナスカの地上絵を発見―儀礼活動目的か

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山形大学のナスカ研究所はIBM研究所と共同研究で、AIを使用した調査によって、6か月間の現地調査で新たに303個の新地上絵を特定したと発表した。この研究の成果は、米国科学アカデミー紀要 (PNAS)に掲載されている。

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ナスカの地上絵は、ユネスコの世界文化遺産として広く知られ、少なくとも2000年以上前に描かれ、1920年代に発見された。これまでの研究では、動物や植物、道具などを描いた具象的な地上絵が430個確認されており、そのうち318個を山形大学ナスカ研究所がリモートセンシング技術(人工衛星、航空機、ドローン)を用いて発見されている。

しかし、ナスカ台地は約400平方キロメートルに及ぶ広大な地域であるため、高解像度の航空写真を全て目視で確認し、全域の現地調査を実施することは時間的に困難なのだという。

この調査を加速するために、山形大学とIBM研究所が提携し、IBMの先進的なAI技術を活用して飛行機から撮影した膨大な量の空中写真を分析した。その結果、わずか6か月間で303個の新しい具象的な地上絵を発見した。IBMのAIを使用することで、地上絵の発見率が16倍も高まったとのこと。

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地上絵発見にAIを使用する際の課題の1つに、トレーニングデータの量が限られている点が挙げられている。研究チームは、この課題に対処するため、少量のトレーニングデータでも高いパフォーマンスを発揮する強力なAIモデルを開発した。

このモデルにより、地上絵が存在する可能性の高いエリアを特定することが可能になったのだという。AIモデルが提示した地上絵の候補の中から、平均36件を精査することで、地上絵の可能性が高い候補を1件見つけることができた。

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合計1309件の有望な候補が特定され、その約4分の1について現地調査を行った結果、わずか6か月間で303件の新たな具象的地上絵が発見され、既存の具象的地上絵の数はほぼ倍増した。具象的地上絵の数が増加したことで、ナスカ台地における地上絵のモチーフや分布の分析が可能となった。

面タイプの具象的な地上絵が大量に発見されたことで、面タイプの地上絵は線タイプとは、様式・規模・分布に関して違いがあることが分かったのだという。

面タイプとは、小道から見える「掲示板」のようなもので、主に家畜や首級に関連する活動を共有するために制作された。

面タイプの地上絵には、人間自身や人間によって飼育された家畜、加工された首級などが主に描かれている。これらの地上絵は通常、ナスカ台地を縦断する曲がりくねった小道から見える。おそらく個人または小規模なグループが制作し、観察していたと考えられるとのこと。

一方、巨大な線タイプの具象的地上絵には、主に野生動物が描かれている。これらは、直線や台形の地上絵ネットワークに沿って分布しており、おそらく共同体レベルで儀式的な活動のために制作・使用されたと考えられるのだという。

今後IBMの地理空間基盤モデルを活用して、AIの能力をさらに向上させることで、さらに多くの地上絵の発見につながる可能性があるとしている。

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Top Image : © 山形 大学

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