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2021.11.13
知財ニュース
月面農場実現へ─JAXAと竹中工務店ら、国際宇宙ステーション「きぼう」で世界初となる袋型培養によるレタス栽培に成功
宇宙航空研究開発機構(JAXA)、竹中工務店、キリンホールディングス株式会社、千葉大学、東京理科大学は、世界初となる宇宙での袋型培養槽技術の実証実験を、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟内で実施した。将来の月探査等での長期宇宙滞在時における食料生産に向けた技術実証を目的としたものとなる。
JAXAは、地球からの補給に頼らず、月面に農場を設営し長期滞在のための食料を生産するという構想を立てて研究を行なってきており、5者は2017年から宇宙での適用も想定した袋型培養槽技術の共同研究を行なってきた。袋型培養槽技術は、小型の袋の内部で植物を増殖させる技術だ。
この技術を用いた栽培方式は、密閉した袋内で植物を栽培するため、雑菌の混入を防ぎ、臭気発生がなく、サイズもコンパクトなシステム。設備も簡易でメンテナンスしやすく、省エネルギー性があり、人数に合わせた数量調整も容易となる。
今回の実験は、2021年8月27日から10月13日までの48日間行い、期間中に培養液の供給および空気交換を行い、生育の促進を図った。9月10日にはレタスの本葉を確認し、その後も順調な生育を続け、収穫に至った。
今後は、生育したレタスと培養液、生育の様子を撮影した記録を回収し、宇宙での適用可能性や本栽培方式の優位性を評価する。また、育ったレタスに食品衛生上の問題がないかの確認や、栽培後の培養液を分析し環境制御・生命維持システムで再利用処理が可能かについても確認していくという。
将来的には、この袋型培養槽技術を用いることで、一度に大量の葉菜類の栽培だけでなく、ウイルスフリーな苗の育成にもつながるなど、惑星探査時の長期の宇宙船内滞在時や滞在施設での大規模栽培への活用が期待される。袋型培養槽技術が持続的な宇宙活動へ貢献するよう、今後も研究を進めていくという。
Top Image : © キリンホールディングス 株式会社