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2021.05.20
知財ニュース
日本政府、大気中のCO2を直接回収する技術「DAC」の開発支援へ2兆円の基金を活用
日本政府が、脱炭素社会に向けて大気から直接二酸化炭素(CO2)を分離・回収する「DAC」の開発支援を進めることを発表した。脱炭素技術開発などを支援する2兆円の基金を活用する予定だ。開発支援によって、現状では難しい低濃度の大気からの分離・回収技術の実用化を目指している。
DACとは、「ダイレクト・エア・キャプチャー」と呼ばれるもので、大型の機械を使ってCO2濃度が0.04%程度の大気からCO2を分離・回収するテクノロジーだ。世界の平均気温の上昇を1.5℃以内に抑えるという「パリ協定」の目標を達成するためには、二酸化炭素の排出を減らすだけではなく、大気中から回収する必要があるとされている。その課題の解決策として、DACの活用が有望視されている。
石炭火力発電所や工場などから排出される二酸化炭素(CO2)を大気に拡散する前に回収する「CCS」という技術と比較して、DACは経済活動に制約を与えず、排ガスよりも低濃度の大気から大量のCO2を直接回収することできる。
CO2の分離・回収技術として、神戸学院大学の稲垣冬彦教授がDAC向けに開発したアミンという化合物に吸収させる「固体吸収法」や、九州大学の藤川茂紀准教授らが開発したCO2だけを通す高分子の薄い膜で回収する「膜分離法」、極低温下で液化し沸点の違いを用いて分離する「深冷分離法」などがある。政府はいずれの分離・回収方法も日本企業が強みを持つ技術が活用できるとみており、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)ではCO2の分離・回収技術の開発事業を公募。企業や大学などが参画した6件の研究開発を進めている。
米・パデュー大学の技術者が開発した光の98.1%を反射して冷却効果を生む「最も白い塗料」や、家庭用CO2回収マシーン「ひやっしー2.0 for HOME」など、CO2削減に貢献する知財が生まれる一方で、政府による支援で環境問題解決の研究が促進されることが期待される。