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2022.02.05

知財ニュース

JAXA、航空機の被雷危険性予測研究を福井県で着手―世界でも珍しい冬雷多発地帯にレーダー設置

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JAXAは、航空機が雷を受けやすいエリアを予測し飛行ルートの設定などに役立てるため、福井空港に気象レーダーを設置し研究に着手する。福井市の雷が観測された日数の平年値は年間37.4日で、全国の気象台で、金沢市の45.1日に次いで2番目に多いという。JAXA航空安全イノベーションハブの主任研究開発員・吉川栄一氏は「冬季雷は日本海沿岸など世界でも限られた地域でしか発生しないとされ、特に多発する北陸は研究に向いている」と話している。

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航空機は飛行中に機体に雷が落ちても安全に飛べるよう設計されているが、機体の損傷や着陸後の点検作業などで欠航や遅延が発生したりする場合がある。特に最新の航空機は、軽くて強いCFRP(炭素繊維複合材料)を多く用いており、損傷すると金属より修理が難しいという問題がある。

そのためJAXAは、雷が起きそうなエリアを予測し、2018年から「被雷危険性予測技術」の研究を本格的に行なってきた。気象庁が全国に配備しているC帯レーダーの観測データを購入し、小松(石川県)や羽田などの被雷しそうなエリアを予測・検証してきたが、さらに精度を高めるため、福井空港の旧管制塔の屋上を借り、高さ約2メートルある「X帯二重偏波レーダー」を22年度に設置したい考えだ。

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X帯二重偏波レーダーは、C帯レーダーよりも雲の中の粒子の種類を高精度に検知できるのが特長。雷は雲の中であられと小さな氷の粒「氷晶」がぶつかり、摩擦で静電気を帯びて発生するとされる。X帯レーダーで電波を発射し、あられや氷晶の多いエリアを判別し、雷の危険性を推測する。特に1便当たりの被雷が国内有数の多さの小松空港方面をチェックする考え。観測半径は約80キロで、研究期間は24年度末までを予定している。

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また、JAXAは20年に福井県と航空科学技術に関する包括協定を締結し、昨冬からは福井空港で積雪観測の実証実験を実施。滑走路に埋設したセンサーで積雪深と雪質をリアルタイムに把握する世界初の技術「雪氷モニタリングシステム」の開発を目指している。

JAXA「被雷危険性予測技術」

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Top Image : © JAXA

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