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2023.06.29

知財ニュース

山形大学とIBM、ナスカの地上絵を新たに4点発見─AIの深層学習を利用

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山形大学ナスカ研究所と日本アイ・ビー・エム株式会社は、AIの活用により、新たに4点の「ナスカの地上絵」を特定することに成功した。本研究成果は国際学術雑誌「Journal of Archaeological Science」に掲載された。

今回特定された4点の地上絵は、「脚」(78m)、「魚」(19m)、「鳥」(17m)、「人型」(5m)の4点で、このうち人型の地上絵は既に2019年11月に公表されているもの。

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航空写真による地上絵の調査は、写真が多岐にわたるため、肉眼で調査候補を見つける従来の方法では膨大な年月が必要だった。そこで両者はこの課題を克服するため、ナスカ台地北部を中心に深層学習による写真検出の実証実験を開始。深層学習技術を用いることで、航空写真から肉眼で地上絵を探すよりも、約21倍速く地上絵の候補を特定可能になったという。

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しかし、既知の地上絵の絵柄はそれぞれ唯一無二な上、約10~300mとサイズも多岐にわたるため、それらをそのままトレーニングデータとして利用して新しい地上絵を発見するのは難しい。そのため、両者は既知の地上絵の細部の画像を複数のスケールで切り出し、同じサイズに揃えてトレーニングデータとして使用することで、複雑で異なる大きさの地上絵の検出を試みた。この手法により、トレーニングデータを307点まで増やすことが可能になったという。

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なお、今回の論文のタイトルは“Accelerating the discovery of new Nasca geoglyphs using deep learning”で、2019年11月に発表した共同での実証実験の技術的な仕組みと、その後の現地調査を含む研究の成果がまとめられている。また、ナスカ台地北部で実施した実証実験にもとづいて、AIの深層学習技術の詳細が示されている。

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両者では、実証実験の成果を受けて、AIを利用した地上絵の分布調査をIBMワトソン研究所と取り組んでいる。今後はペルー文化省と連携して、AIで発見した地上絵の保護活動を展開する予定という。

プレスリリースはこちら(1)(2)(3)

山形大学ナスカ研究所 公式サイト

論文はこちら

Top Image : © 山形大学 ナスカ研究所

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