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2024.07.25

知財ニュース

東京大学、生きた皮膚を持つ顔型のロボットを開発

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東京大学大学院情報理工学系研究科の研究グループは、人の皮膚細胞から作製される「培養皮膚」を利用し、細胞由来の生きた皮膚を持つ顔型のロボットを開発したと発表した。

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これまで、ヒューマノイドなどのロボットはシリコンゴムで被覆されることで人間らしく柔らかい皮膚を備えてきた。しかし、ロボットが人間のように人間らしく仕事を進めるようになりつつある今、シリコンゴムを使う限りは自己修復やセンシング、排熱(発汗)など人間らしい能力を備えていないという課題が残っている。

研究グループはこれらの課題に対して、人の皮膚細胞から作られる培養皮膚をロボットスキンにするというアプローチのもと、生きている皮膚組織に被覆された指型ロボットなどを開発してきた。しかし、皮膚組織をロボットの被覆素材にしようとすると、皮膚組織をロボットへスムーズに固定する方法を考える必要があるのだという。人間の皮膚が下の肉との間で滑らないことからわかるように、皮膚は皮下組織とスムーズに面で接着されているのだ。

このたびの新しいアプローチでは、皮膚組織をロボットの表面にスムーズに固定するための「穴型アンカー構造」を開発した。この構造は皮膚組織をゲル化させて固定することで、ロボットの動きに合わせて自然に皮膚が動くように設計されている。また、この技術を用いて、笑顔を作ることができる顔型ロボットを実現した。

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従来の研究では、生体組織を人工物に固定する際は突起上のアンカー構造を用いて組織の端点のみを引っ掛ける構造が取られてきたが、突起が突き出る形状のアンカー構造はロボットのスムーズな見た目を阻害し、動きの干渉になることもある。人体には、「皮膚支帯」と呼ばれるコラーゲンを主成分とする網目状の繊維構造が皮下組織に存在し、皮膚組織の皮下組織への固定で重要な役割を果たしている。

また、この組織は筋肉の動きの皮膚への伝達にも役立っており、特に顔においては表情筋によるスムーズな表情の形成に貢献しているとのこと。

研究グループは、この皮膚支帯から着想を得て、生体組織と人工物とを接着する手法を考案。人工物をV字に貫通する穴の内部で皮膚組織をゲル化させ固定する「穴型アンカー構造」を開発し、これを用いて生きた培養皮膚に覆われた顔型の構造体を作製した。

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また、アンカー構造による皮膚組織への動力伝達のデモンストレーションとして、モーターの動力が穴型アンカーを介して皮膚に伝達されることで笑うことができる顔型ロボットを開発した。

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この技術は、美容や整形医療分野にも応用が期待されている。生体機能を有する人型ロボット(ヒューマノイド)開発への活用の他、しわの形成メカニズムの理解など美容・整形医療分野での応用も期待されるとしている。

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Top Image : © 東京大学 大学院

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