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2021.10.16
知財ニュース
花王、あぶらとり紙でパーキンソン病を早期診断へ─皮脂RNAの分析で判別
花王、Preferred Networks(PFN)、順天堂大学は2021年9月21日、皮脂に含まれるRNA(リボ核酸)に、パーキンソン病患者特有の情報が含まれることを発見したと発表。皮脂RNAを分析することでパーキンソン病の判別が可能であると示されたという。将来的にはあぶらとりフィルムで顔の皮脂を拭き取るだけで、疾患の早期診断につながる技術の確立を目指す。
花王はヒトの皮脂に含まれるRNAを解析する独自の技術を開発し、ディープラーニングの研究と開発を行うスタートアップ企業Preferred Networksと2019年に共同研究を始めた。今回の研究はパーキンソン病の治療や研究を手掛ける順天堂大学も参加し、早期診断への応用を目指す研究を進めた。
健常者とパーキンソン病患者の皮脂をあぶらとりフィルムで採取し、次世代シーケンサーで皮脂RNAの発現量を分析したところ、約4000種類のRNAの情報が得られた。その中でもパーキンソン病患者において大きく変化していた200から400種類のRNAに注目すると、パーキンソン病の病態と密接に関連している複数のRNAが増加している傾向がみられたという。
さらに皮脂RNAや年齢、性別情報を用いて機械学習モデルを構築したところ、皮脂RNAを分析することでパーキンソン病の判別が可能であると示されたとのこと。この研究成果は英科学雑誌『Scientific Reports』のオンライン版に9月20日付で公開されている。
パーキンソン病は、進行性の中脳黒質神経細胞脱落を特徴とする日本で2番目に多い神経変性疾患で、日本の患者数は14万人に上る。有病率が10万人あたり約140人に上り、高齢になるほど発症率が高まるため、2030年には全世界で1400万人が罹患すると予測されている。現在のところ根治する治療方法は存在しないが、早期の確定診断と適切な治療の継続によって症状をコントロールすることができる。
今後は研究成果の実用化に向け、症例数を増やして解析する必要がある。診断など医療分野は花王にとって新規の事業領域であるため、同社が主体で事業化を進めるかを含めた事業展開の方針を今後検討していくとしている。
Top Image : © Preferred Networks