News

2023.06.20

知財ニュース

パナソニック、香りと鮮度を保つ新・乾燥食品技術「常圧凍結乾燥」を発表─家庭用冷蔵庫にも応用可能

l-jn230330-6-4

パナソニック くらしアプライアンス社は、共創パートナーと新たな食の体験価値を創造する「未来の食プロジェクト」を開始。第一弾として「常圧凍結乾燥技術」による乾燥食品のプロトタイプを完成させた。

「常圧凍結乾燥技術」は、食材の凍結後、食材の水分を抜いて乾燥させる方法で、京都大学大学院工学研究科の中川究也准教授との共同開発によるもの。一般的な熱風式の乾燥食品に比べ、香りと栄養素を保ったまま乾燥できるほか、サクサクとした食感が特徴のフリーズドライ食品とも異なり、しっとり、ねっとりした独特の食感を実現できる。

l-jn230330-6-5

一般的に、食品のおいしさを保ったまま冷蔵・冷凍保存するには、食品中の水分が抜ける昇華現象をいかに抑制するかがカギとなる。特に熱風式の乾燥の場合は、小さな組織に水が残っていると、毛細管力によって構造が破壊され、栄養素や香りが大きく減ってしまう。

一方、「常圧凍結乾燥技術」では反対に、食材の水分を凍結させた上で氷となった水分を除去するため、毛細管力が小さいまま乾燥できるほか、水で容易に復元可能。1カ月の常温保存が可能なほか、水分の調整により食感の異なる乾燥食品も作成できるという。

l-jn230330-6-3

また、フリーズドライの場合は、大規模な設備を使用し真空で凍結乾燥させる必要があり、乾燥時に食品を構成する組織間の隙間が狭く無数の穴が空いてしまう課題があった。一方、常圧凍結乾燥は、真空状態が必要なく小型化が可能。組織間の隙間も大きく、香りや栄養を多く維持できるという。

さらに温度と風の制御ができれば、現在の家庭用冷凍冷蔵庫でも応用が可能で、将来、家庭用製品の開発も視野に入れているとのこと。

l-jn230330-6-1

今回採用された乾燥食品のプロトタイプは「鰻の炊き込みご飯」「雑炊」「ぜんざい」の3品で、料理作家KYOTO SNT LAB.の中村元計氏、才木充氏、髙橋拓児氏との共同開発によるもの。「常圧凍結乾燥技術」で出来立ての雑炊を加工すると、湯を注いだ際に既存の製法よりも三つ葉や松茸の香りを復元できたという。

l-jn230330-6-2

なお、「鰻の炊き込みご飯」については、家電と食のサブスクリプションサービス「foodable」で販売を予定。同社は今後、和食の海外展開や機内食、宇宙食、災害食などへの展開のほか、フードロス削減にも貢献し、2030年までに100億円規模の事業を創出を目指すとしている。

ニュースリリースはこちら

「foodable」公式サイト

Top Image : © パナソニック くらしアプライアンス 社

広告