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2022.04.22

知財ニュース

減塩食の塩味を1.5倍にする「箸型デバイス」を明治大とキリンが開発─電気刺激で味覚を操作

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キリンホールディングス株式会社と明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明研究室は、共同研究の結果、電気刺激で塩味の味わいを増強させる電気刺激波形と箸型デバイスを開発した。本デバイスを用いると、減塩食を食べたときに感じる塩味が1.5倍程度に増強されることを世界で初めて確認したという。

また、この電気刺激で塩味を増強する効果は、箸、スプーン、茶わんなどの日常的に用いる食器に活用することで、薄味の減塩食に対する味の満足度を高められる可能性があるとのこと。

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2019年からキリンと宮下研究室は、人体に影響しないごく微弱な電気によって、塩味の基となる塩化ナトリウムやうま味の基となるグルタミン酸ナトリウムなどが持つイオンの働きを調整し、疑似的に食品の味を濃くしたり薄くしたりすることで味の感じ方を変化させる「電気味覚」の研究を共同で行なってきた。

両者は今回、微弱な電流で減塩食の味わいを増強させる電気刺激波形を開発。この技術を搭載した箸型デバイスを作成し、臨床試験を実施した。実験は、40歳~65歳で現在減塩をしている、または過去に経験のある男女36名を対象に実施。一般食品を模したサンプルと、減塩食を模したサンプルをこの箸型デバイスを用いて試食の後、感じた塩味強度について評価する試験を行なった。また、減塩味噌汁の塩味強度や風味の変化についても評価した。

実験の結果、箸型デバイスに電気刺激を付与することで、付与しない条件と比較して塩味が1.5倍程度増強される結果が得られ、塩味強度は一般食品サンプルと同等を感じることを確認した。また、減塩味噌汁を用いた実験でも塩味の増強効果が確認され、コクやうま味、全体のおいしさの向上を感じたという意見が得られた。

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生活習慣病の重症化を予防するには1日6.0g未満の食塩摂取量が望ましいと考えられているが、塩分を控えた食事(減塩食)に対して「味が薄い」と感じる人も少なくなく、減塩食を続ける上での阻害要因となっていた。

キリンと宮下研究室は今後、本共同研究成果を活用し、味覚による精神的な満足感と栄養面から導かれる健康の両方を、減塩の食生活を送る人々に提供することを目指す。食生活をよりおいしく、より楽しく、より健康にすることができるよう、食生活の満足度を高めて「生活習慣病予防」をサポートする新たなサービスの開発を進めるとしている。

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Top Image : © 明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科

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