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2021.08.11
知財ニュース
表裏に別の画像を同時投影する「Janus(ヤヌス)Screen」とは─NTTドコモが開発
一方向からのプロジェクター投影で、表と裏のスクリーンに別々の画像を映し出す、NTTドコモが開発した「Janus Screen」(ヤヌススクリーン)がSNS等で話題となっている。
Janus Screenとは、スクリーン片側からのプロジェクター投影のみで、前面だけ・背面だけ・前後に同じ画像を投影・前後に異なる画像を投影という、4つの方法で画像投影ができるシステム。従来技術では、一方向からの投影では両面に同じ画像を映し出すことしかできなかったが、Janus Screenでは前後で別画像の投影が可能となる。
Janus Screenには、偏光板(人工的に特定の光の振動を制御する板)を搭載したプロジェクター2台と、多層構造のスクリーンを使用している。プロジェクターの1台には水平偏光板を、もう1台には垂直偏光板を設置。スクリーンは、前から水平偏光板・不透明板・右円偏光板・半透明のリアスクリーンの4層で構成し、水平偏光板と不透明板には大きさ1.5mmの穴を3mm間隔で格子状に開けている。
スクリーン前面の画像表示は、水平偏光板を設置したプロジェクターが担う。水平方向に偏光した光は2層目の不透明板で反射し、前面へ画像表示される。穴から通過した光は3層目の偏光板で吸収され、背面のリアスクリーンには到達しない。[上図赤線]
背面画像はもう1台が担当。垂直方向に偏光した光は1層目で弾かれ前面表示されないが、穴を通過した光が4層目のリアスクリーンまで到達するため、背面画像として表示される。[青線]
プロトタイプの投影では、前面に葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」、背面には「凱風快晴」と異なる画像の投影に成功。前面・背面・両面での選択的な投影の切替えも可能とした。NTTドコモの研究論文では、プロトタイプの改善点として偏光板による画像の明るさの低下や、穴の存在による解像度の低下などを改善点に挙げている。しかしそれらは、素材や加工方法の見直しで対応が可能という。
Janus Screenは、店舗装飾や広告、会社内の案内表示など様々な活用が期待される技術だ。窓ガラスに広告表示できるガラス製透明スクリーン「Glascene(グラシーン)」と組み合わせれば、車内後部座席で映画を見ながら、車外には広告掲載を行い広告収入を得る、といったことも可能となるかもしれない。
Top Image : © UIST '20 Adjunct(Adjunct Publication of the 33rd Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology)