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2023.09.14

知財ニュース

東大、音で発電する素子の開発に成功─会話音や環境音から発電する超薄型音力発電素子を開発

超薄型音力発電素子

東京大学大学院工学系研究科の研究チームは2023年9月1日、会話の音や環境音などの「音力」で発電する「ナノメッシュ音力発電素子」(超薄型音力発電素子)の開発を発表した。

「ナノメッシュ音力発電素子」は、複数のナノファイバーシートを積層した薄さ50μm以下の超薄型音力発電素子。音による空気の振動が圧電材料となるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)ナノファイバーシートに直接伝わり、従来の薄型発電素子よりも環境音を用いて大きな電力を生み出せるのが特徴だ。

fig3

近年、ウェアラブル機器やIoT技術の進歩により、環境内の微小なエネルギーを電力に変換する環境発電(エナジーハーべスティング)技術が注目を集めている。中でも、音響エネルギーによる発電は、光や温度を用いた発電に比べて季節や天候の影響を受けにくく、持続可能な電力源としての可能性が注目されている。

こういった背景から、特定の周波数の音響エネルギーを共鳴・増幅させる立体的な構造を持つ音力発電素子の実現が望まれていたが、立体的な構造の薄型素子の実現や、音による振動を増幅させる微細な穴などを薄型素子に加工することが困難であること、薄型素子は従来の素子と比べて同じ音による変形が大きくなるため耐久性に難があることから、実現が難しいとされてきた。

そこで研究チームは、「電界紡糸法」(高電圧のノズルから溶解した材料を噴出させてナノ寸法のファイバーを作る技術)で、PVDFナノファイバーシートを2層のナノファイバー電極シートで挟み込み、多数の微細孔をもつ立体構造の薄型素子を形成。さらに、PVDFナノファイバーシートのファイバーを一方向に配向させ、世界最高の電力密度(8.2W/平方m)を実現した。

fig4

なお、研究チームは、実証実験を実施。「ナノメッシュ音力発電素子」と開発したセンサーをマスクに貼り付けたところ、会話の音や周辺からの音楽を電力に変換し、LEDを光らせることができたほか、温湿度センサーによる計測や無線の伝送の電力源にも使用できたという。

研究チームは今後、IoTやウェアラブル機器における電力供給源としての応用に期待を寄せている。

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Top Image : © 東京大学 大学院工学系研究科

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