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2024.06.26
知財ニュース
カールスルーエ工科大学、太陽光取り込みと冷却効果を持つ新素材を開発―建築用ガラスの代替に
カールスルーエ工科大学(KIT)の研究者ら が、ポリマーベースのマイクロフォトニック多機能メタマテリアル(PMMM)を開発した。
© キタ州ガン・ファン
この材料は太陽光を室内に取り込み、より快適な室内環境を確保し、蓮の葉のように自らを浄化するため、将来的には壁や屋根のガラス部品に取って代わる可能性があるとのこと。また、研究チームは、KITキャンパスでの屋外テストで材料のテストに成功している。
建物の透明な屋根や壁の利用は、自然光の利用、エネルギー消費の削減、居住者の健康改善に効果的な手段として大きな注目を集めている。しかし、従来のガラス製の屋根や壁は、まぶしさ、プライバシーの懸念、過熱の問題などの課題があった。
研究者チームは、この課題を解決するため、ポリマーベースのマイクロフォトニック多機能メタマテリアル(PMMM)を開発した。PMMMは、シリコンで作られた微細なピラミッドで構成されている。これらのピラミッドの大きさは約10マイクロメートルで、これは髪の毛の直径の約10分の1なのだという。この性質により、PMMMフィルムには、高い透明性を維持しながら、光散乱、自己洗浄、放射冷却といったいくつかの機能が備わっている。
研究チームは実験室と実際の屋外条件下での野外実験で材料の特性をテストし、最新の分光測光法を使用して光透過率、光散乱、反射特性、自浄能力、冷却性能を測定した。その結果、テストでは、周囲温度と比較してセ氏6度の冷却が達成されたとのこと。さらに、分光透過率も高く、透明度は95%で、従来のガラスの91%を上回る。同時に、マイクロピラミッド構造によって入射太陽光の73%が散乱され、ぼやけた外観が作成される。
この材料を屋根や壁に使用すると、明るく、同時に眩しさのない、視覚的に保護された仕事や生活のための室内空間が実現するとされている。温室では、光合成の効率がガラス屋根の温室よりも9%高いと推定されているため、高い光透過率により収量が増加する可能性があるのだという。マイクロピラミッドは、PMMMフィルムに超疎水性特性も備わっている。水は水滴の形で転がり落ち、表面から汚れや塵が除去される。このセルフクリーニング機能により、手入れが簡単で耐久性のある素材になるとのことだ。
Top Image : © カールスルーエ 工科大学