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2021.11.16

知財ニュース

ラックと三菱UFJ銀行、ATMの不正出金をAIで検知する実証実験実施─不正検知率94%を達成

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ITセキュリティソリューションを手がける株式会社ラックは、AIを活用してATMの不正出金を検知する実証実験を三菱UFJ銀行と共同で行い、不正取引検知率94%を達成したと発表した。実証実験は2021年5月より同銀行と共同で構築を進めてきたもので、高齢者などを狙った特殊詐欺によるATM不正出金対策を想定して行われた。

特殊詐欺は、高齢者からキャッシュカードを騙し取ったり盗み取ったりして、犯罪者がATMを不正操作し出金するなどの手口による金融犯罪。警察庁によると、2020年の特殊詐欺による被害額は285.2億円。過去最高となった2014年(565.5億円)より半減しているが、いまなお高齢者を中心に被害が後を絶たない。

実証実験では、三菱UFJ銀行から提供された半年分の取引データを活用して検証を実施。取引データは、事前に正常な取引と不正な取引でラベル付けを行い、ラックが開発した不正検知AIに機械学習させた。

しかし、提供された不正取引のデータ量は正常取引に比べてごく僅かで、データ量が不均衡な状態にあり、そのままAIに学習させても不正取引の特徴が無視され、不正をうまく検知できない状況があった。

そこで本実験では、学習用データの比率調整を実施。不正取引データを複製してカサ増しさせつつ、正常取引データを間引く作業を行った。併せて安全な金融サービスの環境構築に取り組む、ラックの「金融犯罪対策センター」の知見を活用。保有する特殊詐欺の知見・ノウハウを用い、特徴量エンジニアリング(取引データを基に有用なデータ変数=特徴量を作成し、機械学習の標本データとする)を実施した。それらにより、不正取引検知率94%を実現したという。

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ラックは今回のATM不正取引検知の実証実験を皮切りに、今後はインターネットバンキングでの不正検知においても研究を進め、実用的な金融機関向けAI不正検知システムの実現を目指していくという。実用化により、特殊詐欺やサイバー犯罪など、金融犯罪被害の抑制につながると期待される。

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Top Image : © 株式会社 ラック

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