News

2025.12.10

知財ニュース

スパコン「富岳」、マウス大脳皮質の緻密な再現に成功―1000万ニューロン・260億シナプスの脳モデル構築

スクリーンショット 2025-12-08 12.35.31

電気通信大学は11月18日、理化学研究所のスーパーコンピュータ「富岳」を用い、動物の脳シミュレーションとして過去最大かつ最も精緻なモデルを構築したと発表した。

本プロジェクトは、同大学と米国Allen研究所(Allen Institute)の研究チームが、高度情報科学技術研究機構(RIST)、山口大学、理化学研究所計算科学研究センターと共同で実施したもの。

今回、研究チームは、スーパーコンピュータ「富岳」の圧倒的な計算能力を活用し、マウスの大脳皮質全体をデジタル空間上に極めて精密に再現することに成功したと発表。

スクリーンショット 2025-12-08 12.34.43

構築されたモデルは、約1,000万個の神経細胞(ニューロン)と260億個の結合部(シナプス)を含む巨大なネットワークで構成されており、細胞一つひとつの電気信号のやり取りまでもがリアルにシミュレーション可能だという。

これまで、これほど大規模な仮想脳シミュレーションは、計算量が膨大になるため従来は困難とされていた。今回、実際の脳と同等の複雑な挙動を再現できたことで、将来的には生体を使わずにデジタル空間上で脳の観察や実験を行う「デジタルツイン」としての活用が期待される。

米国側の研究代表者であるAllen研究所のAnton Arkhipov博士は今回の成果について、「十分な計算能力があれば、この種の脳シミュレーションを効率的に実行できるという新たな扉が開かれた」とコメント。「これは技術的な金字塔であり、より大規模かつ高精度なモデルも実現可能だという確信を与えてくれた」と成果を強調した。

なお、本成果は11月16日から21日にかけて米国ミズーリ州セントルイスで開催された、HPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)に関する国際会議「SC'25」にて論文発表された。

プレスリリースはこちら

報道資料はこちら

Top Image : © 国立大学法人 電気通信大学

広告