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2024.10.22
知財ニュース
JAXA、台風10号の雲の立体構造を地球観測衛星『はくりゅう』で初観測
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、地球観測衛星「EarthCARE」(和名:はくりゅう)で、シナジー観測によって得られた、台風10号の雲の立体構造を撮影した画像を初公開した。
(c) JAXA/ESA
地球観測衛星「EarthCARE」(和名:はくりゅう)は2024年5月29日7時20分(日本標準時)に打ち上げられた衛生だ。「EarthCARE」には、「CPR(雲プロファイリングレーダ)」「ATLID(大気ライダ)」「多波長イメージャ(MSI)」「広帯域放射収支計(BBR)」という観測方式の異なる4種類のセンサが搭載されている。
欧州宇宙機関(ESA)と日本が共同で開発し、ESAはそのうちの3つのセンサの開発および運用を担当。「CPR(雲プロファイリングレーダ)」は、JAXAと情報通信研究機構(NICT)が開発したセンサで、日本の東海上にある梅雨前線上の雲域の内部を捉え、世界で初めて宇宙から雲の上下の動きを測定することに成功した。
「EarthCARE」の特徴は、これら4センサによってひとつの対象地点を同時刻に観測する「シナジー観測」だ。雲の立体構造を撮影し、高さ分布で、赤色系の色塗は雨や雲水、青色系色塗は雪や雲氷の高さ分布を示す。
各センサのデータを複合的に組み合わせることで、ひとつのセンサだけではわからない新たな情報を提供することができる。この4種類のセンサが1つの衛星に搭載されるのは初めてのことなのだという。今回、JAXAはシナジー観測によって得られた奄美大島付近の海上にあった台風第10号の雲の画像を初公開した。
(c) JAXA/JMA
「CPR(雲プロファイリングレーダ)」は厚い雲、「ATLID(大気ライダ)」は薄い雲に感度があり、CPRとATLIDを組み合わせることで、より幅広い雲の種類を観測することができる。またCPRとATLIDが両方とも観測できている雲域は2つのセンサにより、より正確に雲の量を推定でき、MSIも複合することで、雲の量をより正確に推定できるとのこと。
雲の高さや種類、重なり方といった雲の特性は、地球の気候システムを大きく左右する。一方で、雲による温暖化への影響は十分に定量化されておらず、温暖化予測における最大の不確実要因となっているのだという。温暖化への雲の影響を定量的に評価するうえでも、こうしたシナジー観測による精緻な雲観測データや「CPR(雲プロファイリングレーダ)」による雲粒のドップラー観測、さらには数値モデルとの融合によって気候変動メカニズムの科学的な理解が促進されることが期待できる。
「EarthCARE」のデータの活用によって、より精度の高い気候変動予測につながり、気候変動への適応策の検討に貢献するとしている。
Top Image : © 宇宙航空研究 開発機構