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2021.10.09

知財ニュース

スーパーコンピュータ「富岳」、緯度ごとに異なる太陽の自転速度を再現─太陽物理学の謎解明へ前進

富岳

スーパーコンピュータ「富岳」で太陽の自転の様子を再現することに成功したと、千葉大学大学院理学研究院の堀田英之准教授、名古屋大学宇宙地球環境研究所長の草野完也教授の研究チームが発表した。

太陽は地球と異なり、緯度ごとに異なる自転速度で回る「差動回転」をしており、赤道付近が北極・南極付近より速く自転している。従来のスーパーコンピュータによるシミュレーションでは、差動回転の再現ができず、太陽物理学の長年の難問とされていた。今回、世界トップクラスの計算速度を誇るスーパーコンピュータの富岳を活用し、差動回転の再現ができたという。本研究成果は、2021年9月13日に英科学誌『Nature Astronomy』で発表された。

太陽で差動回転が起きている事実は、1630年頃から認知されていた。赤道付近では25日程度で自転するのに対し、北極・南極の極地方は30日程度かかる。太陽で差動回転が形成・維持されている理由は、太陽内部の乱流的な熱対流(暖かい気体や液体が上に向かい、冷たい気体・液体が下に向かう物理現象)によるものと考えられてきた。そのため、コンピューターで差動回転が再現できない原因は、熱対流の計算が不正確なためとされていた。

本研究では、富岳に太陽対流層の54億地点の温度などのデータを入力し、太陽の対流層全体の動きの解析と計算を実施。その結果、赤道が速く自転する差動回転の再現ができたという。

熱対流 シミュレーションで再現された差動回転の様子。色は角速度を表し、黄色に近づくほど速い自転速度(短い自転周期)を示す。

本研究では併せて、差動回転の形成・維持に対し、磁場が大きな役割を持つことを発見。これまでの計算では、太陽内部の磁場エネルギーは熱乱流エネルギーに比べて小さいとされ、重要視されていなかった。しかし、本研究の計算では、磁場のエネルギーは乱流エネルギーの最大2倍以上となっており、磁場の重要性が明らかになったという。

太陽の差動回転は、太陽黒点数が約11年の周期で増減する「太陽活動11年周期」の解明につながると考えられている。なぜ周期が存在し黒点が変動するかなど、詳細は現時点では明らかになっておらず、太陽活動11年周期は太陽物理学最大の謎となっている。

研究チームは、本研究による差動回転の再現を、太陽活動11年周期の謎解明に向けたステップと位置づけている。今後も富岳を活用しながら研究を進め、謎解明に挑戦していくという。

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Top Image : © 国立大学法人 千葉大学

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