No.1055
Tech Direction Awards受賞作品
2025.08.05
アニメ制作時の“ギザギザ線”を滑らかにする撮影支援ツール
OLM Smoother v2

概要
「OLM Smoother v2」とは、アニメーション制作の過程で生じる、階段状のギザギザの線(エイリアシング)を滑らかにするツール。アンチエイリアシング技術を活用しており、手描きの絵をスキャンする際などに発生するギザギザの線を、ブラー(ぼかし)をかけずにスムージングできる。2009年に公開した「OLM Smoother」を改良したもので、カラースペース(色空間、表現できる色の範囲)を意識した色の補間や、作品のテイストに合わせた線のなめらかさ・濃さの微調整などを可能にした。制作現場でのトライアルが好評だったことを受け、2024年11月にプラグインをリリース。ツールの無償公開プロジェクト「OLM OpenTools」の1つとして展開しており、クリエイターの制作をサポートして、アニメ文化の発展に寄与すると期待されている。
なぜできるのか?
「OLM Smoother」をベースとした改良
日本のアニメ制作に特化したアンチエイリアシングツール「OLM Smoother」をもとに、機能性を高めて構築した。アンチエイリアシングは、ギザギザ線の原因となる階段状のピクセルのエッジ(端)を周囲のピクセルとブレンドして見た目を滑らかにする技術で、多様な手法が存在する。「OLM Smoother v2」では、画像内すべての境界線を検出するMLAA(MorphoLogical Anti-Aliasing)の拡張版で、より正確・効率的なピクセル処理ができるSMAA(Subpixel Morphological Anti-aliasing)の特徴を用いた。
機能改良では、色の強度にもとづくピクセルの区別とブレンドの精度を高めるため、画像の色の明るさを調整するガンマ補正を適用。カスタムカラーのリストの追加や、黒い線の補正度合いを微調整できる機能も追加した。さらに、エイリアシングされた形状から推定される真の形状の再構築を制御する機能を実装。パラメーターを導入して推定された形状の修正を可能にし、ユーザーによる画像の滑らかさの制御を実現した。
「OLM OpenTools」によるツール提供
オー・エル・エム・デジタルの研究開発部門(R&D)が手掛ける「OLM OpenTools」で、ツールを提供している。「OLM OpenTools」は、同部門で開発したプラグインなどのツールを無償公開するプロジェクト。アニメーションやフルCGなどのデジタル映像制作を進める中で開発したツールの一部を、Apache License Version 2.0(商用利用無料)で公開している。ツールはいずれも、制作現場で使われている実用性のあるもの。開発したツールの無償公開で、映像制作の効率化や映像表現の可能性を拡げることを目指している。また2008年より、開発したツール群を紹介する「OLM R&D祭」を開催。「OLM Smoother v2」は、2024年に行った祭りで紹介し反響を得た。
相性のいい産業分野
- アート・エンターテインメント
アニメ・CG・VRなど映像コンテンツ制作の支援ツールとして活用
ライブ映像のアニメ的エフェクト・演出ツールに搭載
- IT・通信
国内外の映像制作ツールへのブラグイン追加
- 教育・人材
映像制作ツールの開発モデル・教材として活用
- AI
生成AIの描画機能と融合させ生成画像・映像のクオリティを向上
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © OLM Group