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2024.02.16

知財ニュース

押すと色が変わり、アルコールで元の色に戻せるCNF製の紙を開発─名古屋大ら

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名古屋大学大学院工学研究科、未来社会創造機構マテリアルイノベーション研究所の松尾豊教授、東京都立産業技術研究センターの小汲佳祐主任研究員らの共同研究グループは、押圧により色が変化する「メカノクロミック材料」と木材を機械処理や化学処理によりナノサイズまでほぐした天然物由来の材料「セルロースナノファイバー(CNF)」を用いて、機械的な圧力に応じて黄色から緑色へ色が変わる紙を開発した。

本研究成果は、2024年1月26日付アメリカ化学会の学術誌『ACS Applied Engineering Materials』のオンライン速報版に掲載された。

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本研究では、繊維径の異なる3つのセルロースナノファイバー(CNF)を用いてそれぞれメカノクロミックペーパーを作製した。

この作製には、機械的刺激により折れ曲がり型からねじれ型へと分子の立体構造が変化することにより色が変化するFA化合物を使用。CNFを溶かした水溶液にFA化合物を混ぜ込み、型に流し込んで乾燥させるという非常にシンプルな手順でメカノクロミックペーパーの作製が可能だ。

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作製したメカノクロミックペーパーは、機械的刺激で黄色から緑色へと色が変化することが確認できた。

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圧力応答した緑色の部分は、アルコールとの接触により、元の黄色へ戻ることも確認できた。これは、メカノクロミックペーパーが繰り返し使用可能であることを示しているのだという。また、走査型電子顕微鏡観察や接触角分析などの表面の解析により、色の戻りやすさがCNFの繊維径に起因していることも明らかになった。

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この色が変化する紙は25~300MPaの範囲で機械的圧力に対して線形応答を示した。また、より簡便な検出方法として、CYM色彩解析を用いた簡易な画像処理手法により、機械的圧力の強さの分布を可視化することも可能になった。

つまり、押した圧力の数値がわかり、圧力分布を可視化することができ、繰り返し使用可能な圧力測定紙として利用可能なことが示された。

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従来、メカノクロミック化合物はその特性から圧力応答材料としての利用が期待されていたが、実際の応用事例は限定的だった。本研究はCNFへ混ぜ込むという簡便な方法でメカノクロミック化合物の応用を可能にした。

CNFは植物がCO2を取り込んだ脱炭素社会に貢献する次世代材料としてとても期待されており、本研究の成果はCNFのさらなる応用研究の発展に貢献すると考えられている。

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Top Image : © 名古屋大学大学院 工学研究科

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