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2025.03.12
知財ニュース
京王電鉄、井の頭線で自動運転実証試験を開始、3月中旬から

京王電鉄は、2025年3月中旬より井の頭線全線(渋谷~吉祥寺間、営業キロ12.7km)で自動運転(ワンマン運転)の実証試試験を開始すると発表した。 この試験は、少子高齢化や働き方改革など、鉄道事業を取り巻く環境の変化に対応し、運行の効率化と安全性の向上を目的としている。
この試験は、自動運転設備を搭載した1000系車両を使用し、回送列車として運転士と車掌が乗務した状態で実施される。
自動運転システムは、出発制御、駅間走行制御、定位置停止制御(TASC)などの機能を備えている。出発制御では、ATC(自動列車制御装置)が進行を示し、ホームドア・車両扉が全て閉まるなどの条件を満たしたときに、出発ボタンを操作することで列車が出発する。駅間走行制御では、ATCの指示速度や線路条件に基づき、乗り心地の良い運転を行う。定位置停止制御(TASC)では、停車駅が近づくと駅の定位置停止パターンを発生させ、自動的に定位置に停車する。これらの機能により、運転操作全般(加減速)が自動化され、均質な運転が可能となる。これにより、定時性の向上と省エネ効果が期待されている。
さらに、車内案内システムの更新も行われ、多言語表記が可能な車内案内表示器に変更される。また、開いているドアをチャイム音で知らせる装置も設置され、全ての乗客が安心して利用できる環境を整える。車体デザインも変更され、自動運転設備搭載車両であることを識別できるよう、アクセントラインやシンボルマークが追加される。シンボルマークは、井の頭線の「井」の字をモチーフにし、編成ごとのカラー名称をあしらったデザインとなっている。また、乗務員室と客室間の仕切り窓を一部拡大し、子どもが前面展望を楽しめるようにするなど、利用者への配慮も施されている。
ブレーキ制御機能も向上し、従来の7段階から28段階に細分化される。これにより、きめ細やかなブレーキ操作が可能となり、停止精度と乗り心地の向上が図られる。また、通過駅強制停車ボタンが導入され、車内トラブル発生時に乗務員が操作することで、最寄りの駅に強制的・自動的に定位置に停車させることが可能となる。この機能を操作すると、自動的に車内ビジョンに「近くの駅に停車します」と表示される。
京王電鉄は、今回の試験を通じて技術革新を促進し、利用者の利便性向上や省エネ運転によるCO2排出量削減を目指すとしている。 今後、順次試験編成を増やしながら、自動運転の本格導入に向けた検証を進めていく方針だ。
Top Image : © 京王電鉄 株式会社