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2023.05.31

知財ニュース

キヤノンが「ペロブスカイト量子ドットインク」を開発─次世代ディスプレイに実用可能な耐久性を実証、世界初

キヤノン 量子ドット

キヤノンは5月29日、次世代の量子ドットディスプレイに適用可能な「ペロブスカイト量子ドットインク」を開発し、実用可能な耐久性を世界で初めて実証したと発表した。

量子ドットは、高輝度で高い色純度の光を発光できる直径数ナノメートルの半導体微粒子だ。量子ドットを用いたディスプレイは、色域が広く表現力が高いと注目されている。これまでディスプレイに主な材料として用いられてきたカドミウム(Cd)とは異なり環境負荷も低いため、近年関心を集めている。

そうした中、キヤノンはペロブスカイト構造を持つ量子ドットインクに着目して開発を進めてきた。ペロブスカイト構造とは結晶構造の一種で、超伝導、強誘電性、発光、光電変換など様々な特性を持つ。それを用いたペロブスカイト量子ドットは、色純度と光の利用効率がともに高く、高輝度・広色域・高解像度を兼ね備えたディスプレイの実現が期待されているが、耐久性の低さが課題となっていた。

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同社は、プリンターのインクやトナー開発で培ってきた技術を応用し、独自手法でペロブスカイト量子ドットに保護層を形成。そうすることで色純度と光の利用効率を保ちながら実用可能な耐久性を持つ「ペロブスカイト量子ドットインク」を開発した。

同インクは、従来型のInP(リン化インジウム)量子ドットインクと比較して色域が広い。InP量子ドットインクでは、「ITU-R BT.2020」(テレビ放送の映像信号に関する国際電気通信連合(ITU)の規定)の色域カバー率は88%だが、「ペロブスカイト量子ドットインク」は94%をカバーする。また光の利用効率も高いため、従来よりも消費電力を約2割削減できる見込みがあるという。

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「ペロブスカイト量子ドットインク」により、画素ピッチが小さい場合でもを効率よく変換できるようになる。将来的には、8Kなどの超高精細量子ドットディスプレイを実現できる可能性があるという。

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Top Image : © キヤノン 株式会社

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