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2024.02.28
知財ニュース
韓国、「牛肉の味」ハイブリッド米を開発─米粒の中で牛の細胞を培養、安価で環境負荷低減
韓国の研究チームが、動物の筋肉と脂肪細胞を増殖させることによる、培養牛肉米を開発することに成功したと発表した。米粒の中で動物細胞を増殖させることで、環境負荷や価格を抑えつつ栄養価を高めたハイブリッド米を合成する。
牛肉味の米 ©︎ Yonsei University
米粒は多孔質で組織化された構造をしており、細胞に栄養を与え、成長を促進するため、米は理想的なプラットフォームとなるのだという。研究チームは、動物細胞を培養するために米を使用し、この細胞環境を模倣した。
米粒と細胞の間をより密着させるために、魚ゼラチンと食物酵素で米をコーティング。次に、牛の筋肉と脂肪幹細胞を米に播種し、ペトリ皿で9~11日間培養したとのこと。
できあがったハイブリッド米の栄養価を比較すると、普通の米に比べ、タンパク質が8%、脂質が7%多いことが判明した。食感は典型的なもちもちとした柔らかい食感と比較して、ハイブリッドライスはより硬く、脆いのだという。
筋肉細胞が多く含まれるハイブリッド米には牛肉やアーモンドに関連した臭気化合物が含まれており、脂肪細胞を多く含むハイブリッド米にはクリーム、バター、ココナッツオイルに相当する化合物が含まれているとのことだ。
研究チームは、筋肉細胞と脂肪細胞の両方が成長するためのより良い状態を米粒内に作り出すことを計画している。これにより栄養価がさらに高まる可能性があるのだという。
生産されるタンパク質100g当たりの二酸化炭素(CO2)の排出量は、牛肉が49.89kgなのに対し、ハイブリッド米は6.27kg未満と推定されている。このように、ハイブリッド米が通常の食肉生産で発生する二酸化炭素(CO2)の量より少ないことも確認できている。
商品化されれば、ハイブリッド米の価格は1kg当たり約2.23ドルとなる可能性がある。牛肉の価格は14.88ドルなため、比べると安い価格で生産が可能になる。
研究チームのパク氏は、「米の細胞がこれほど順調に成長するとは思わなかった」と述べ、「この穀物ベースのハイブリッド食品は、いつか飢餓の救援物資、軍用糧食、さらには宇宙食としても役立つかもしれない。」としている。
Top Image : © 延世大学