News

2022.03.21

知財ニュース

九州大学と土木研究所、環境中に漏れた全世界のプラスチックごみ約60年分の行方を判明

九州大学と土木研究所 寒地土木研究所は3月2日、1960年代から現在までに海に流出したプラスチックごみやマイクロプラスチックになったものなど「海洋プラスチック」の行方を世界で初めて重量ベースで明らかにしたと発表した。

九州大学応用力学研究所の磯辺篤彦教授と土木研究所 寒地土木研究所の岩﨑慎介研究員は、全世界の海を対象にプラスチックごみの動きを、全世界の海で再現できるコンピューター・シミュレーションを開発した。1960年代から現在までの約60年間に、川から海に流れ出たプラスチックごみや、海洋投棄されたプラスチックごみの量の再現に成功し、ごみの行方を解析した。

このシミュレーションの結果を解析した結果、世界の海に流出したプラスチックごみのうち、約26%(660万トン)は目視できるサイズのごみであり、約7%(180万トン)はマイクロプラスチックとして、今も漂流や漂着を繰り返していることがわかった。

そして、60年代から海に流出したプラスチックごみの総量約2500万トンのうち約67%(1680万トン)はマイクロプラスチックに破砕したのち、海底に沈んだものや、漂流中の生物付着で重くなり海底に沈んだものなど、すでに海岸や海面近くから姿を消したと推計された。しかし、これらを合計しても2500万トンほどにしかならず、同じ60年間に陸上で捨てられたと推計されるプラスチックごみの総量の約5%に留まる。残りの95%(5億トン)は、陸上で行方不明となっているようだとわかった。

今後はこの5億トンのプラスチックごみの行方の追究が、「広範な環境科学の研究者が関わるべきテーマ」だと研究グループは言う。本研究成果は、大阪G20サミットで宣言された「海洋プラスチックの追加的な汚染を2050年までにゼロとする」との大阪ブルー・オーシャン・ビジョンの実現に向けて、陸から海に至るプラスチックごみ量の削減計画策定に役立つことが期待される。

ニュース原文はこちら

Top Image : © 九州大学

広告