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2025.12.17

知財ニュース

花王、使用済み紙おむつを炭素資源化して燃料に―ゼロ・ウェイストの町で実証開始

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花王は、2021年から研究開発を進めてきた使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステムに関する実証実験を、徳島県上勝町で開始すると発表した。本実証実験では、開発した炭素化装置で使用済み紙おむつを半炭化物(熱分解による炭化に至る前段階で、炭素を多く含む物質)に加工し、地域で活用する方法を検討する。

使用済み紙おむつは、2030年度には年間約245万~261万トンに達し、一般廃棄物に占める割合は6.6〜7.1%になる見込みなのだという。また、多くの水分を含むため焼却効率を低下させる要因ともなっており、高齢化に伴う使用量増加とともに、ごみ処理に対応する自治体の負担となっている。

花王は、使用済み紙おむつを半炭化して資源として活用するシステムを構築し、処理の課題解決とCO2排出量の削減をめざす。同社は、その実現に向けて、使用済み紙おむつを半炭化できる炭素化装置を開発している。花王独自の熱分解技術により、燃焼に至らない低温で水分を除去し、炭素を多く含む半炭化物に加工。殺菌・消臭が行われ衛生的に処理できるほか、発生場所で処理ができ、体積も小さくなるため回収負担が軽減できる。

生成された半炭化物は、利用する地域の意向に応じて土壌改良資材や燃料としての活用が想定されている。これまでの半炭化物に炭素を固定する方法に加えて、化石燃料の代替燃料として利用する2つの方法で、CO2排出量削減につながる可能性を確認している。

スクリーンショット 2025-12-08 0.00.02 左から、開発した炭素化装置、使用済み紙おむつを投入する様子、半炭化物

同社は、2021年11月に愛媛県西条市での実証実験で西条市内の保育施設に花王が開発した炭素化装置1号機を設置している。これにより、使用済み紙おむつの体積を約20分の1にまで減らし、炭素を多く含む半炭化物の加工に成功。また、生成された半炭化物は高い燃焼熱を備えており、従来の化石燃料の代替品となる燃料として活用できることがわかったのだという。この実証実験は現在も継続されている。

今回の徳島県上勝町で開始する実証実験は、この2021年から行われている愛媛県西条市の実証実験に続くものだ。徳島県上勝町では、本リサイクルシステムの社会実装を見据えた実証実験を開始し、上勝町ゼロ・ウェイストセンター(WHY)内のごみステーションに炭素化装置2号機を設置する。2号機は、西条市に設置した1号機と比べ、1回あたりの最大処理量が約30kgから50kgに拡大し、より多くの量を一度に処理できる仕様となっている。また、1号機よりも少ないエネルギーでの処理が可能だ。

スクリーンショット 2025-12-08 0.00.13 左から、上勝町ゼロ・ウェイストセンター(WHY)全景と、センター内のごみステーション

本実証実験では、住民が持ち込んだ使用済み紙おむつを炭素化装置で処理する。高齢者を含む幅広い世代が無理なく日常的に利用できるかどうかを検証する。装置で加工される半炭化物は、化石燃料の代わりに燃料として活用していくとのこと。また、花王と上勝町は本実証実験の実施にあたり包括連携協定を締結した。

同社は、2023年に半炭化物を土壌改良資材などとして用い炭素を固定する方法(使用済み紙おむつを焼却して発生するCO2を、炭素化装置で半炭化物にすることで、炭素が固定され排出されるCO2を抑制するもの)を公表していたが、これとは異なる新たなアプローチだとしている。

本実証実験は、花王が2021年から進めてきた使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステムの取り組みを発展させるものだ。病院等の大規模施設への設置も想定しながら社会実装に必要な要素を明らかにし、2025年以降の社会実装を見据えている。これらの取り組みを通じて、使用済み紙おむつの資源化と活用を進め、使用済み紙おむつ処理の課題解決とCO2排出量の削減をめざすとしている。

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Top Image : © 花王 株式会社

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