News
2022.01.25
知財ニュース
サンゴベンチャー「イノカ」が国内初、完全人工環境下でのサンゴの抱卵時期コントロールに成功
環境コンサルティングなどを行うサンゴベンチャー企業・株式会社イノカは1月6日未明、完全人工環境下でのサンゴの抱卵時期のコントロールに国内で初めて成功した。これにより、自然界では1年に1度しかないサンゴの抱卵を人為的に導くことが可能となり、20年後には70~90%が消滅する可能性が高いとされているサンゴ礁の保全に貢献することが期待されている。
同社では、水質や水温、水流、照明環境、微生物を含んだ様々な生物の関係性など水槽内のさまざまなパラメーターのバランスを取りながら、自社開発のIoTデバイスを用いて、自然に限りなく近い状態で特定地域の生態系を水槽内に再現する同社独自の「環境移送技術」により人為的に人工サンゴ礁を形成し、サンゴの長期飼育を行ってきた。
今回の実験では、沖縄県瀬底島の水温データをもとに自然界と時期をずらして水温を同期させることで、サンゴの抱卵時期のコントロールに成功したという。
サンゴ礁は、海の表面積のわずか0.2%ながら、そこに海洋生物の約25%が暮らしているとされ、生物多様性の面で重要な役割を果たしている。また、護岸効果や漁場の提供、医薬品の発見など人間の社会生活においても重要な役割を担っており、その経済価値はWWFレポートによると50年で推定8000億ドル(日本円で約93兆円)と言われている。
本実験の進展によりハツカネズミやショウジョウバエのように何世代にもわたって研究調査を行うモデル生物としてサンゴを扱うことができるようになれば、サンゴの基礎研究が大きく進み、サンゴ保全に寄与すると考えられている。
Top Image : © 株式会社 イノカ