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2024.11.18
知財ニュース
世界初の木造人工衛星「LignoSat」が宇宙へ打上げ―京都大、住友林業が共同開発
京都大学は、住友林業株式会社と共同開発した世界初の木造人工衛星「LignoSat」が、スペースX社の「SpX-31」に乗せてアメリカフロリダ州のケネディ宇宙センターから打上げられたと発表した。
「SpX-31」は、国際宇宙ステーションに物質を運ぶ輸送船で、この中に木造人工衛星「LignoSat」がJAXAの小型衛星放出機構(J-SSOD)に収められ、宇宙に飛び立った。
「LignoSat」は、2020年4月より京都大学と住友林業が取り組んできた「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」で、約4年かけて開発された世界初の木造人工衛星だ。1辺が100mm角のキューブサットと呼ばれる超小型の衛星で、NASA/JAXAの数々の厳しい安全審査を無事通過。世界で初めて宇宙での木材活用が公式に認められた。
宇宙でも安定して使用できる樹種として今回打ち上げる木造人工衛星の実機(フライトモデル)の構体にはホオノキ材を選定。住友林業紋別社有林で伐採したホオノキを使用し、構体の構造はネジや接着剤を一切使わず精緻かつ強固に組み上げる「留形隠し蟻組接ぎ(とめがたかくしありくみつぎ)」と呼ばれる日本古来の伝統的技法を採用している。
完成した木造人工衛星(LignoSat)フライトモデル(打ち上げ実機)/京都大学
宇宙空間ではスペースデブリ(宇宙ゴミ)とならないよう、役目を終えた小型の人工衛星は大気圏に再突入させ、燃焼させることが国際ルールとなっている。
従来の金属製の衛星では、燃焼の際にアルミナ粒子と呼ばれる微粒子を発生し、地球の気候や通信に悪影響を及ぼす可能性がある。木材は大気圏再突入で燃え尽きるため、将来的に木造の人工衛星が増えることで、この影響の低減が期待できるのだという。
住友林業の2024年5月時点の発表によると、国際宇宙ステーション(ISS)到着から約1か月後に「きぼう」日本実験棟より宇宙空間に放出される予定とのこと。今後は木造人工衛星から送信されるデータ解析を通じ、木の可能性を追求し木材利用の拡大を目指すとしている。
Top Image : © 京都 大学