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2022.12.14
知財ニュース
豚骨ラーメンのスープがディーゼル燃料に─廃油原料のバイオ燃料、排ガスはチャーハンの香り
福岡県の西田商運株式会社が開発した豚骨ラーメンのスープを原料としたBDF(バイオディーゼル燃料)が、2022年8月1日から宮崎県の高千穂あまてらす鉄道が運行する観光用「グランドスーパーカート」の燃料に採用された。
BDFとは、廃食油や使用済みの植物油をメタノールと化学反応させて製造されるバイオディーゼル用の燃料のこと。軽油の場合は、排気ガスに含まれるすすやNOx(窒素酸化物)の人間や環境への影響が課題になっているが、BDFは、排気ガスで黒煙が出ず軽油より環境に優しく、本来廃棄されるはずの廃油を再利用でき、また生分解性(土壌や水中の微生物により分解される性質)なため、世界的に注目を集めている。
西田商運株式会社は、1981年に有限会社ヘリオスを設立しBDF事業を本格始動した。協力企業約2,000社から使用済み食用油を回収し、不純物除去、攪拌、熟成などの工程を経て月間10万リットルのBDFを製造しており、同社トラックの約5割の給油をBDFで賄っている。
同社代表の西田氏は、約15年以上前に取引先のラーメン屋で、スープの残渣で出るラードが有料で廃棄されていることを聞き、豚骨ラーメンを原料としたBDFを開発。スープから分離したラードを特殊な方法で精製し、燃料を製造している。なお、本BDFの排気ガスはチャーハンのような香りで、煙たさが減ったという。
高千穂あまてらす鉄道が運行する「グランドスーパーカート」は2017年3月に運行を開始。牽引する動力車2台と、30人乗りの客車で編成し、それぞれ2500ccのディーゼルエンジンを搭載している。
同社によると、本取り組みの目的は脱炭素化にある。外食産業から廃油を買い取る仕組みを確立して行われる同社のBDFの製造方法は、現場収支の改善も期待できるため、産官学の各分野から注目を集めている。
Top Image : © 高千穂あまてらす鉄道