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2023.09.15

知財ニュース

渋谷100台AIカメラ設置プロジェクト、“通年の行動データの蓄積”などHP記述を削除─「監視社会」「怖すぎる」との反応受け

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渋谷の街に100台のAIカメラを設置する「渋谷100台AIカメラ設置プロジェクト」(以下、渋谷100台カメラプロジェクト)を運営するIntelligence Designは9月5日、個人情報の取り扱いについて誤解を招く可能性があるとして、HPの記載内容を修正したと発表した。

渋谷100台カメラプロジェクトは、渋谷駅周辺の店舗・商業施設や公共エリアに、同社のエッジAIカメラを100台設置し、リアルタイムで人流データを取得・解析する取り組み。渋谷区のスマートシティ化に向け、ビッグデータやオープンデータの環境構築を目指す「渋谷データコンソーシアム」の活動の一環として、2023年7月から開始した。

今回のHP記載内容の修正では、実施中の取り組みかのように誤解を招く可能性のある箇所として、個人の行動データを通年で蓄積する、追跡して検知・広域で検知するなどの記載と、関連画像を削除。また、同社が取得するデータは「個人情報保護法の定義する個人情報には該当しない」と明記した。

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修正の背景には、カメラによる監視や行動追跡などへの不安感や拒否反応がある。特に懸念を招いたのが、同プロジェクトの紹介画像「オフライン顧客の見える化」だ。カメラ100台の設置により、「通年の行動データがリアルタイムで蓄積」でき、例として、どのブランドの服を着てどういうルートで周遊したか、特定店舗の訪問は今年何回目で、前回は何を購入したか、などの情報を把握できると記載している。

こうした内容が、9月月初あたりからX(旧Twitter)で取りあげられ、「監視社会だ」「怖すぎる」「ストーカーみたい」などの投稿が寄せられた。メディアでも問題視する複数の記事が掲載された。そうした反応を受け、今回の修正を実施。特設サイトでは紹介画像も削除した。

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渋谷100台カメラプロジェクトでは、取得データの活用の方向性として、都市開発のほか、マーケティング、防犯などを明示している。活用例より、メインはマーケティング・プロモーションを想定した情報提供と見られる。取得した属性情報(性別・年代)や滞在時間などを可視化・分析し、そのビッグデータを一部オープンデータ化して、協賛事業者へ提供するという。

防犯では例として、不審者や不審物の検知、ハロウィーンや年末年始などの混雑時に防犯にあたる警備員配置の最適化や人材不足解消などを挙げている。カメラの設置想定場所にも、センター街など人の集まるエリアが含まれている。

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監視カメラ網が構築されている中国では、一般市民でも防犯や社会秩序の安定に監視カメラが寄与していると考える向きもある。特に都市部では、万引きや窃盗、危険運転や路上駐車などが減少しており、「自分が悪いことをしなければ特に不都合はない」という声もあるという。

渋谷100台カメラプロジェクトでは、「渋谷駅周辺を網羅した人流データの提供・利活用の提案」により、「1人ひとりに合わせた理想の渋谷のまちづくりの実現に還元」する予定。ただ、記載内容の修正後も、懸念する投稿や記事が出ており、不安感の払拭には至っていない。今後の動向が注目される。

記載内容の修正に関するニュースリリースはこちら
「渋谷100台AIカメラ設置プロジェクト」プレスリリース
同プロジェクト・特設サイト

Top Image : © Intelligence Design 株式会社

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