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2024.08.01
知財ニュース
イリノイ大学ら、1種類のインクから複数色の3Dプリントを行う方法を開発―カメレオンの「構造色」をヒントに
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校とベックマン先端科学技術研究所の研究チームは、カメレオンから着想をえて、1種類のインクから複数色の3Dプリントを行う方法を開発したことを発表した。
顔料などの色素の色は、物質が特定の光の波長を吸収することで発現する。一方、タマムシやクジャク、モルフォチョウといった鮮やかな生物の体色は発色原理が異なり、体表面のナノ粒子と可視光の干渉によって発現することが知られている(構造色)。
一般的に、生物の構造色は、生涯変化することはない。しかし、カメレオンをはじめとする変色動物は、皮膚の細胞内の結晶の配列を変えることで、高速で皮膚の色を変えられることが知られている。研究チームは、このカメレオンの生態に着目し、構造を変えるだけで複数の色を表現できるナノ粒子の研究に乗り出した。
研究チームははじめ、「ブロック共重合体」と呼ばれる化合物で自然界の色のパターンを模倣した。しかし、この化合物は、3Dプリンターでの形成に時間がかかることから、新たに分子の骨格から小さな側鎖が隆起した「ボトルブラシ・ブロック共重合体」を制作。実験の結果、紫外線の当て方に応じて色彩(形状と構造)が変化することが分かったという。
その後、研究チームは、本化合物を使用し、ゴッホの《星月夜》やカメレオンの画像を制作。黄色、緑色、青色の多様なグラデーションを1種類のインクから生成できることを証明した。
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の化学・生体分子工学教授イン・ディアオ氏は、「新たな化学的性質と3Dプリントの方法をデザインし、構造色をリアルタイムで調整することで、従来は不可能だったカラーグレーディングを生成可能になった」とコメント。本手法は、現時点では未公開だが、将来的に合成染料を使わないカラフルな素材や新しいタイプのセンサー、生物医学など、さまざまな分野での活用が期待される。
Top Image : © ベックマン先端科学技術研究所