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2023.03.24

知財ニュース

「超音波ホログラム」で生体細胞を非接触で3Dプリント─ドイツの研究チームが発表、臓器の3Dプリントに期待

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マックス・プランク医学研究所とハイデルベルク大学が「touchless 3D printing」と称する技術に関する論文をScience Advances誌に発表した。

この技術は、超音波で材料を動かしてオブジェクトを作り互いに結合させるもの。フィラメントをミルフィーユ状に重ねていく従来の3Dプリントで細胞を成形すると、細胞に機械的・化学的ストレスがかかる可能性があった。一方、本技術はオブジェクトに触れずに遠隔で組み立てられるため、オブジェクトを無菌で適切な状態に保持できるという。

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研究の筆頭著者Kai Melde氏は、小さな粒子を超音波で動かしてさまざまな形に成形する研究を行っており、3D空間に音のホログラムを作れば瞬時に成形できることに気づいたという。しかし、実際に音で3Dホログラムを生み出すのは困難だった。なぜなら、3つのホログラフィックフィールドの重ね合わせにコンピュータによる高い計算能力が必要だったのに加え、3Dのホログラフィックフィールドの場合、必要なメモリが跳ね上がり、体積全体の波動場を繰り返し計算して最適化する必要があったからだ。

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そこで研究者たちは、ゲームに用いられるGPUカードとGoogleの機械学習用ソフトウェアライブラリーTensorFlowを使用した新たな演算処理を考案し、必要な計算を処理させた。またKai氏らは計算が完了すると実際にオブジェクトをプリント。培養液に浮遊する細胞粒子に音波を加えて成形しダメージを与えず設計に成功した。

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なお、最初の実験で作られた最大のものは、直径約10mm、長さ約20mmの2回転らせんで、最大1インチ(約2.54cm))未満の指先ほどの大きさのオブジェクトしか成形できていない。しかし、本技術が発展すれば、将来的には生体細胞を目的の形状に瞬時に成形可能になるとのこと。将来、移植用臓器を3Dプリントで作り出す時代も夢ではない。

論文要旨はこちら

Top Image : © Science Advances

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