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2022.03.25

知財ニュース

森林総合研究所ら、無花粉スギの苗を選別し量産する技術を開発―スギ花粉症対策に貢献

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森林研究・整備機構森林総合研究所、新潟大学、新潟県森林研究所、株式会社ベルディの研究グループが、花粉を放出しない「無花粉スギ」を簡易的にDNA鑑定で識別し量産する技術を開発した。現在国民の4割近くが悩まされているスギ花粉症の根本的な解決に貢献することが期待されている。

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これまで、花粉を飛散しない無花粉スギの苗は、人工交配により生産され、無花粉スギと、無花粉スギの素質を持つスギの交配により種を獲得し、生産されてきた。この方法では、交配によって得た種を2〜3年育てた苗から強制的に雄花をつけさせて花粉の有無を確認するが、約半数は花粉を飛散するスギとなるため、無花粉性の確認に2〜3年を要していた。

今回開発された方法では、交配でできたスギの実から未熟の種を取り出す。培地の上で2〜3ヶ月培養し、細胞の塊(カルス)となったものからDNAを取り出し鑑定し、無花粉となるカルスだけを選び出す。このカルスから成熟・育成された苗木は100%が無花粉スギとなる。このため、無花粉かどうかの選別の大幅な時間短縮が可能になった。

この方法では、1gのカルスから1000本以上の苗木が生産可能だという。また、カルスから培養した不定胚(細胞が分化した組織。種と同じように発芽し苗に成長する)は冷蔵保存ができ、2年間は発芽能力を保つため、需要の変化に応じた工場での大量生産が可能になるとのこと。

photo02 (A)増殖したカルス(B)不定胚(C)発芽した不定胚(D)育成された苗

研究チームによると、国内の人工林の44%にスギが植栽されており、これらのスギを伐採した後、無花粉スギの苗木に植え替えることでスギ花粉を減らすことができるという。また、林業だけでなく、都市の緑化用にも無花粉スギを活用できると期待を寄せている。

タイトル『スギの雄性不稔遺伝子MS1判別マニュアル

著者:森林総合研究所樹木分子遺伝研究領域(編)

掲載誌:中長期計画成果番号:第5期中長期計画9(森林環境-3)(2022年2月)

ISBN:978-4-909941-28-2


タイトル『組織培養による無花粉スギ苗の増殖マニュアル

著者:森林総合研究所樹木分子遺伝研究領域(編)

掲載誌:中長期計画成果番号:第5期中長期計画10(森林環境-4)(2022年2月)

ISBN:978-4-909941-29-9

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Top Image : © 国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林開発研究所

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