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2025.05.21
知財ニュース
千葉工業大学、日本初の「AI大学講師」を導入―大規模言語モデルChatGPTとブロックチェーン技術を活用

千葉工業大学は、日本国内で初めてとなる「AI大学講師」の導入を開始したことを発表した。
AI大学講師は、大規模言語モデルChatGPTと、受講生一人ひとりの学習履歴をブロックチェーン技術を活用した「Verifiable Credential(検証可能なデジタル証明書、以下VC)」として記録・蓄積するデータベースを組み合わせることで、従来の教育現場では困難だった「思考プロセスの可視化」と「個別最適化された対話型指導」を実現する。
日本の大学教育において、AIが講師として正式に導入されるのは今回が初の試み(※同社調べ)。今後、前期授業期間が終了する7月までの期間で実証実験を行い、教育効果の定量的検証に取り組む。
AI大学講師は、単なるAIチャットボットではなく、学習データのデータベース化、VC(国際標準規格であるVerifiable Credential)の発行、生成AIとの連携、そして対話的サポートという4段階のプロセスで機能する。学生のあらゆる学習活動をデジタルデータとして記録し、それを改ざん不可能で永続的に保存可能なVCとして発行。このVCをカスタマイズされたChatGPTに連携させることで、AIが学生一人ひとりの学習履歴や特性を分析し、最適なタイミングで適切な問いかけや助言を行うという仕組みだ。
AIが学生との対話を通じて、「なぜそのように考えたのか」「別の視点からはどう捉えられるか」という内容を問いかけることで、学生が自らの思考を整理し、言語化する能力を育成する。また、VCの活用により、AIが不確かで裏付けのない説明を提供することを防ぎ、学生は常に正確な情報に基づいた質の高い指導を受けることができるという。
授業修了時には、学習成果をまとめた内容がVCとして発行され、学生は就職活動などの際に自身の能力を客観的かつ信頼性の高い形で証明することが可能になる。
このVCは、Web技術の標準化を推進する非営利団体W3C(World Wide Web Consortium)によって標準化されたデジタル証明書であり、教育機関が電子署名を付与することで、AI特有の課題であるハルシネーションを防ぎ、信頼性の高い学習支援を実現していく。
現在「AI大学講師」は、千葉工業大学の変革センターが提供する「web3・AI概論」の授業内で実証実験を実施中。学習内容の理解度や定着率、批判的思考力や問題解決能力の向上、自主学習時間の変化、授業満足度、中退率の改善など、多角的な観点から教育効果が検証され、特に、AIによる個別最適化指導が知識獲得や長期的な定着に与える影響や、AIとの対話が学生の思考の深さや柔軟性にどう変化をもたらすかに注目されている。
実験結果は、今後の全国の大学への展開計画に活かされる予定。「AI大学講師」の導入は、大規模講義と個別最適化の両立、対話型学習による思考力の向上、多言語対応によるグローバル教育の強化、そして一貫性のある継続的な学習支援の提供といった、高等教育における新たな価値創造に繋がることが期待されている。
Top Image : © 千葉工業大学