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2023.11.24

知財ニュース

熊本大学、瞬間的な大電流で魚身に潜むアニサキスを殺虫する技術でクラファン実施─わずか1週間で第1目標達成

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熊本大学は11月8日、加熱や冷凍をせずに魚介類からアニサキスを殺虫する技術の社会実装を目指し、クラウドファンディングプロジェクトを開始した。用いるのは、瞬間的な大電力「パルスパワー」を魚の切り身に流して、内部のアニサキスを感電死させる技術。プロジェクトは、クラウドファンディングサイト「READYFOR」で開始し、多くの賛同を得て、わずか1週間で第1目標金額の400万円を達成した。

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アニサキスは、生きたまま体内に入ると腹痛などの食中毒を引き起こす可能性がある寄生虫。魚の生食などを通じて通年発生しており、農林水産省によると食中毒原因の約4割を占めるという。

水産業界では長らく対策に取り組み、紫外線やX線、超音波、高圧力、薬品など様々な方法を試してきたが、2023年現在でも、加熱・冷凍以外に有効な方法は見つかっていない。一方で、冷凍によるドリップの流出などで味が劣化する可能性や、冷凍しない生の刺身を食べたいという消費者の要望もある。そのため、水産業界では直径1mm/長さ2㎝ほどの小さなアニサキスを目視で見つけ、手で取り除く作業をしている。

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そこで、パルスパワー技術の研究を手がけていた熊本大学産業ナノマテリアル研究所が中心となり、水産加工業を営むジャパンシーフーズと共同で、アニサキス殺虫技術を開発。同技術では瞬間的に魚身に大電流を流すが、電子レンジなどとは異なり加熱されない。そのため、魚身の温度上昇やダメージを押さえながら、アニサキスの殺虫が可能になる。

sub3 未処理・パルス処理は外皮付近が透明であるが、加熱処理は外皮まで白濁(たんぱく質が変性)している。即ち、加熱による殺虫ではない。

2021年には、アジ専用のアニサキス殺虫装置のプロトタイプ機を開発して、ジャパンシーフーズの工場に設置。アニサキス1,000匹を仕込んだアジフィーレを用いて実験を行い、全アニサキスの殺虫を成功させた。同技術は特許出願している。

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クラウドファンディングで集まった第1目標金額では、殺虫対象魚種をサバ、サケ、サンマに拡げて研究を進めるという。11月15日からは、第2目標金額1,000万円を設定してプロジェクトを継続。集まった資金で、ホタルイカに寄生する旋尾線虫や、ヒラメに寄生するクドア、淡水魚に寄生する顎口虫など、アニサキス以外の寄生虫への対象拡大を目指し研究を行う予定。その後は、馬刺しやジビエへ食品の対象を拡げ、社会実装を進める方針だ。

開発を牽引した熊本大学の浪平准教授は、プロジェクトサイトの中で、「この技術の発展が日本のさまざまな生食文化の未来を救うと信じています」と述べている。クラウドファンディングによる支援募集は、2023年12月26日まで行う予定だ。

ニュースリリースはこちら
「日本の生食文化を守りたい|新アニサキス撃退法の社会実装へご支援を」クラウドファンディングサイト
関連特許・特開2020-18296

Top Image : © 熊本大学

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