News

2021.09.28

知財ニュース

「東京ビジネスデザインアワード」が12のテーマと参加企業を発表、デザイン提案募集がスタート

4659f353-53a2-4627-b08f-6a8268125d2e-x2

「東京ビジネスデザインアワード」が2021年度のテーマを発表し、デザイン提案募集を開始した。

東京ビジネスデザインアワードとは、都内ものづくり企業の優れた技術や素材に新しい可能性を見出し、デザイナーならではの視点やアイデアで、新しいビジネスを生み出すデザインコンペティション。昨年は、42億色を鮮やかに表現するオンデマンド印刷技術「Iridesse Production Press(イリデッセ)」を用いて魚のきらめきを表現した「さかなかるた」が最優秀賞を受賞した。

undefined

2021年度は今年4月からテーマの募集がスタート。審査を経て12のテーマと参加企業が決定した。

1 木材を木ダボでつなげてつくるエコな「木質素材」 株式会社長谷萬(江東区)

「DLT」とは、接着剤を使用せず木ダボのみで接合する木質素材のこと。木材を並べて穴をあけ、木ダボを打ち込むというシンプルな製造工程のため、各地域の中小製材事業者でも製造しやすい素材である。日本の森林資源は現在利用期を迎えており、国内でDLTの普及が進めば、地域活性化につながる。また、丸みや皮付き材などのB級木材を使用することによる、木材有効活用や山側への利益還元にもつながる。

undefined

2 電子回路とプラスチックの「設計・試作・加工技術」 泰興物産株式会社(立川市)

泰興物産株式会社は、顧客の「創りたい」を実現するため、電子回路設計から製品設計、金型製造、射出成形まで自社で行っている。回路設計用CAD、3DCAD、3Dプリンタ、MCセンター、ワイヤー放電加工機、旋盤、射出成形、UVインクジェットプリンタ、レーザー加工機、レーザーマーキングなどを所有。さらに設計・試作過程はほとんどの加工を社内で対応。柔軟な発想で製品実現に向けて取り組んでいる。

undefined

3 大小多彩に加工できる高度なメタル加工技術 株式会社葵製作所(八王子市)

株式会社葵製作所は、50年前の創業当時から、工作機械が一般に普及されていない中でも、高い溶接技術を元に大型の構造物の製作を続け、手作業による溶接作業を重視してきた。その数値化されない感覚を丁寧に次世代へと継承し、現在では機械化と手作業両方の利点を活かして、板金工作の自由度を存分に発揮することで広範囲の要望に応え続けている。更なる時代要請に柔軟に対応し、産業構造の変化や人々の価値観の変化などに着目している。

undefined

4 マグネシウム合金の高精度な切削加工技術 セキダイ工業株式会社(大田区)

セキダイ工業株式会社は、創業以来、主に金属の切削加工により様々な素材、形状の製品を制作してきた。特にマグネシウム合金の切削加工においては、発火リスクのコントロールや素材の管理等で加工を断るメーカーが多い中、多くの納入実績を築いている。マグネシウム合金は、実用金属の中で最も軽量、且つ強度が非常に優れている、衝撃吸収性が高い等、数多くのメリットがある。そのため、自動車部品等様々な工業製品でアルミに代わる素材として、導入が進められてきている。

undefined

5 のり貼り不要、再使用も可能な「紙器設計技術」 株式会社協進印刷(世田谷区)

株式会社協進印刷は、紙器設計として使う人に分かりやすく、製造面においては製造しやすくロスが出にくく無駄を作らないことを目指し、環境面においては「less is more(より少ない事はより豊富)」を心がけより少ない部材で求められている設計を行っている。成形のための糊やステッチを使用せずに、トレー状や箱型に加工することが出来る紙器設計技術を保有。これらは容易に解体可能で、繰り返し使用できる。工業製品だけでなく、知育玩具や付加価値の高い製品などより多くの展開を見込める。

undefined

6 広色域の印刷表現と立体的質感を表現する印刷技術 株式会社新晃社(北区)

Kaleido Plus®のインクを用いた印刷は、テレビの画面やPCのモニターで表現されるRGBの色彩を、オフセット印刷の4色機でもRGB画像の広い色表現領域を再現することができる広色域の印刷方法。これにより、鮮やかな自然の色合いを再現した印刷物を作ることが可能となる。擬似エンボス加工は、UV印刷機で印刷する表面ニス加工により、印刷物の表面に質感という感触の要素を加える。ツルツルとした部分とザラザラとした部分を作り出し、その細かさやコントラストのつくりによって、立体感を表現。リアルな感じや高級感のある手触りを実現できる、デザインの表現が広がる技術である。

undefined

7 さとうきびの搾りかすから生まれた「サスティナブル素材」 株式会社Rinnovation(文京区)

「さとうきびのある沖縄の原風景を残したい」という思いからはじまった取り組み。沖縄のさとうきび産業が抱える後継者不足や収益性の低さという課題、「大量生産・大量廃棄」のサイクルから脱却できていないアパレル産業が抱える環境負荷の課題に対し、世界最大の農作物であるさとうきびを原材料にサスティナブルな繊維や生地へとアップサイクルすることに可能性を感じ、さとうきびの搾りかすで未利用資源である「バガス」を原材料とした素材を開発。日本の伝統的なものづくりの技術を独自に掛け合わせ、バガスからパウダー化、和紙、スリットの工程を経て和紙糸を生成し、その和紙糸とcotton USAで生地を織布している。

undefined

8 アパレル向け生地を活用したオリジナル「製本加工技術」 株式会社新里製本所(文京区)

製本事業者は、出版社から仕事をもらういわゆる「待ち」の事業。出版不況の中、長期的な事業発展に向けて新たな事業を模索する必要性があった。また、上製本のみならず、製本事業者は年々数が減少する一方、製造設備の投資効果に見合わないため新規参入もなく、業界全体としても打開策が必要な現状である。特徴ある上製本、その製造技術への認知を一般の消費者や事業者に向け、より高める事業展開を検討し、外装をアパレルのような生地を使って多色展開できないかとの思いに至る。生地をノートに加工する技術を自社で保有していたことで、サンプル品を製造し、実現可能性を確信。製本業界の新たな可能性を見出す。

undefined

9 航空・宇宙業界でも採用される高度な「工業ゴム精密加工技術」 株式会社東金パッキング(東村山市)

大型裁断機、カッティングマシン、超精密塗布ロボット、UVインクジェットプリンタ、レーザー加工機(2021年10月導入予定)等の様々な加工設備を保有。これらを活用し、ゴム、樹脂類への精密切断及び彫刻加工、対象物へ精密に液剤を塗布する加工、フルカラー印刷加工等をワンストップで実現することが可能である。更に、創業以来40年にわたりノウハウを積み重ねてきた手加工技術があり、細かい接着、貼り合わせ等も得意としている。

undefined

10 業界の未来を担う「裂地袋物縫製技術」 有限会社プレジール(世田谷区)

裂地素材は革のような伸縮性に乏しく、ヘリを返す必要等もあり、制作においてきっちりとした型紙作りが必須になるなど、高い技術力が必要とされる。一人の職人が型紙作りから仕上げに至るまでを担当し、皇室向けの和装バッグのOEM制作を行うほど、技術力の高さは評価されている。しかし、職人の中で最も若い者でも69歳。若い担い手不足は顕著で、技術の承継は最後のチャンスともいえるほど困窮している。一人でも多くの方にこの技術について知ってもらい、魅力溢れる商品を生み出すことで、若年層が憧れる職業へと変貌を遂げることを目指す。

undefined

11 災害に強く安全性の高いビル外壁の「完全不燃化技術」 FSテクニカル株式会社(葛飾区)

従来よりビル外壁の改修技術として、エポキシ樹脂注入工法とポリマーセメントスラリー注入工法があったが、いずれも300℃以上の温度でその固定力は著しく低下してしまう。特にエポキシ樹脂の固定力は290℃でゼロとなってしまい、火災に対する備えにはまったく適していない。それに対し、当社が提案するセメントスラリー注入工法は、可燃性であるエポキシ樹脂の替わりに不燃性材料であるセメントスラリー(セメントと水との混合液)を注入剤として採用することで、800℃の高温下でも壁面への固定力は十分に確保できることに加え、完全な不燃性を実現した。

undefined

12 ユーザーの声をリアルタイムに変換する「AI声質変換技術」 クリムゾンテクノロジー株式会社(世田谷区)

ユーザーの声を様々な声にAIでリアルタイム変換する技術。機械学習でキャラクターの声の特徴量を抽出することにより、ユーザーの声を変換する。音質をより良くするにはユーザーの声とキャラクターの声、両方の学習が必要となるが、汎用的に様々な人の声をキャラクターの声に変換することができる。現在はWindows、macOSのアプリケーションとして展開中。当技術はテーマパークやイベントでの使用が中心だったが、新型コロナウイルス感染症の影響で、Web会議技術が一般化したことにより、当AI声質変換技術を使った遠隔接客を推進している。また、派生技術として、シンセサイジングによる声質変換も実現。もう少し落ち着いた声や元気な声など声の雰囲気を変換することも可能になっている。

undefined

これらのテーマに対し、ビジネスモデルを含めた新たな製品・用途開発案をデザイナーからの「提案」として募集し、選ばれた提案は「テーマ賞」として、企業とデザイナーをマッチングし、その後のビジネス展開を東京都が支援する。さらに最終審査会で「テーマ賞」を受賞した提案から「最優秀賞」と「優秀賞」を決定、副賞として賞金を贈られる。

オンライン相談会の予約受付もスタート、テーマ企業12社によるプレゼンテーション映像も公開された。

募集期間は11月3日(水)まで。来年2月に提案最終審査と結果発表が行われる予定だ。

応募に関する詳細はこちら
公式HPはこちら

Top Image :©東京ビジネスデザインアワード

広告