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2023.10.04
知財ニュース
イーロン・マスク氏のNeuralink、脳内インプラントの被験者募集を開始─麻痺した四肢機能の制御へ挑戦
イーロン・マスク氏が率いる米Neuralink(ニューラリンク)は現地時間9月19日、人間では初となる、脳インプラントの被験者募集を開始した。
同社の創業は2016年。脳インプラントと電子機器の接続による身体機能サポートや拡張を目指し、BCI(ブレイン・コンピュータ・インターフェース)を開発している。独自開発した 「N1」では、これまで動物実験を実施。2022年11月には、脳内インプラントを埋め込んだサルが、ディスプレイ操作を行う様子を公開している。
動物実験の進め方などを含め問題視する向きもあるが、23年5月には、米食品医薬品局(FDA)が人間での臨床試験を承認。今回、独立治験審査委員会と病院施設から、人間による臨床試験の募集開始に関する承認を得たとして、被験者の募集に至った。
N1は、直径1インチほどの大きさで、Bluetoothを搭載したワイヤレス型の脳インプラントだ。専用の手術ロボット「R1」で頭蓋骨に埋め込み、1,024の電極を脳につなぐ。
Neuralinkは、今回の臨床試験を「PRIME (Precise Robotically Implanted Brain-Computer Interface) Study」と呼称。治験により、N1の安全性とR1の性能評価、麻痺を持つ人が思考で外部デバイスを制御するためのBCIの初期機能の評価を行う。術後は経過観察・調査や機能制御などを行いながら、6年かけて研究を進めるという。
臨床試験の実施に向け、同社は現在、公式サイトの専用ページで患者登録を実施中。登録対象者は、法的に成人に達している米国国民または永住者で、四肢麻痺、視覚障害、難聴、失語症などの障がいを持つ人となる。
今回の臨床試験ではさらに、脊髄損傷または筋萎縮性側索硬化症(ALS)による四肢麻痺(四肢の機能制限)を持つ22歳以上と、対象を限定。また、ペースメーカーや脳深部刺激装置などを埋め込んでいる人、過去に発作を経験した人、MRI検査を要する人などは対象外となる。
イーロン・マスク氏はX(旧Twitter)で、「初の人間の患者が、まもなくNeuralinkのデバイスを受け取ることになる。最終的には、全身の動きを回復させる可能性を秘めている」と述べている。今後の動向が注目される。
Top Image : © Neuralink