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2022.05.08

知財ニュース

東京海洋大学、死んだ魚から子孫を作ることを可能に─遺伝子資源の際のバックアップ技術として期待

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東京海洋大学 水圏生殖工学研究所の市田健介助教らの研究チームは、これまで技術確立をしてきた代理親魚技術(※)を応用することで、死後長時間経過した魚からでもその子孫を作り出すことを可能にした。

具体的には、死後12〜24時間経過したニジマスから卵と精子のおおもとの細胞である“生殖幹細胞”を単離して、これらを別のニジマス個体(代理親魚となる宿主)に移植した結果、それが死後12時間経過後のニジマスの生殖幹細胞であっても、正常に宿主の卵巣や精巣へと取り込まれ、その後増殖し卵や精子へと分化してゆく様子が観察された。

その効率は死後直ちに移植を行った場合と比較しても全く遜色がなく、死後24時間経過後のニジマスの生殖幹細胞においては、移植効率が低下したものの、同様に移植後の宿主の卵巣や精巣内で増殖、分化が確認された。本結果は、死後の経過時間が12〜24時間であれば、代理親魚技術を応用することで、それらの生殖幹細胞を卵や精子へと分化させることが可能であることを意味しているという。

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水産上重要な品種や数少ない絶滅危惧種など、貴重・希少な魚の飼育に関わる飼育者は、疾病や設備トラブル、自然災害などにより、それらを失うリスクを常に抱えている。これまでは事故などにより魚が死亡した場合、当然のことながら、その子孫の作出はあきらめるほかなく、大きな損失となっていた。

本技術は今後、希少魚の遺伝子資源の際のバックアップ技術として貢献することが期待されている。

(※)代理親魚技術:魚類の卵や精子のおおもとになる細胞(生殖幹細胞)を摘出し、これを宿主となる個体、すなわち代理親魚に移植することで、移植した生殖幹細胞に由来する卵や精子を宿主から生産させ、次世代を生み出す一連の技術。東京海洋大学水圏生殖工学研究所にて技術開発を進めている。

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Top Image : © Getty Image

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