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2025.07.15
知財ニュース
乃村工藝社、ロケット廃材で制作したロケットタンクスピーカー「DEBRIS」を開発

乃村工藝社グループは、同社のR&Dプロジェクト「noon by material record」と、宇宙ロケット廃材を活用し新たなプロダクトを生み出すアップサイクルプロジェクト「&SPACE PROJECT」との共同プロジェクトで、ロケット廃材で制作したロケットタンクスピーカー「DEBRIS(デブリ)」を開発したと発表した。
本プロジェクトでは宇宙産業が盛んな北海道大樹町の協力のもと、開発の過程で試験使用されていたロケット燃料タンクを調達。また大樹町でフィールドレコーディングを行い、オリジナル楽曲も制作している。乃村工藝社グループは本プロジェクトの企画、スピーカーのデザイン・設計、制作、楽曲制作を担当している。
同社は大量の資源を消費する建築・内装業界で、素材を起点としてさまざまなサステナブルな研究や開発に取り組んでいる。「noon by material record」では「素材=地球資源」をテーマに建築廃材、海岸に漂着したプラスチック片、デニム端材、ロケット開発で役目を終えた燃料タンクなど、サステナブル・マテリアルを活用したスピーカーを制作し、音響体験を通して素材の新しい価値観を生み出すことにチャレンジしている。第2弾となる今回は、今後さらに成長が期待される宇宙分野の廃材に着目し新たな活用方法を検討。異なる分野に軸を持つプロジェクトや企業が集まった。
「DEBRIS(デブリ)」は、&SPACE PROJECTと、noon by material recordの出会いから生まれたスピーカーだ。「廃材はその資源の終わりではなく、新たな可能性のはじまり」と考える両者が、宇宙産業の開発過程で生まれたロケットの燃料タンクを素材に音響装置として誕生させた。DEBRISという名前には、音の破片、記憶の欠片、制作の途中にこぼれた感覚など、さまざまな未定義の断片を引き受ける意味が込められている。
頂点に浮かぶ球形のオブジェは、金工作家の外山和洋氏の制作協力によるものだ。鉄・銅・アルミなど地球の元素である無機質な金属を一度完全に溶かし、有機的な形に再構築することで、素材の記憶を表現した。宙に浮かぶ架空の鉱物を想起させ、ロケットが夢見たロマンを描いている。
楽曲は、ロケット燃料タンクが生まれた場所の空気や風景をそのまま音楽にできないかと、世界で活躍するトラックメーカー/DJ GONNO氏に楽曲制作を依頼。共に北海道大樹町でフィールドレコーディングを実施した。風や波の音、ロケット発射台のビーコン音などを収集し作り上げた音楽は、「DEBRIS」の構造と響きに合わせて綿密に構成されている。音響は、「宇宙は重力が無く上下左右という概念が存在しない」ことから着想を得て、360度に音が広がる無指向性構造を採用している。
2025年6月27日(金)には、東京・日本橋のホステルCITANで「DEBRIS(デブリ)」のリリースパーティーが開催された。会場には、宇宙開発や素材に関心を寄せる来場者、純粋にダンスミュージックを楽しむ来場者、資源循環に興味を持つ多様な来場者が集結した。
Top Image : © 株式会社 乃村工藝社