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2025.08.06

知財ニュース

熊本大学とAMI、心臓の音と心電図からAIがわずか8秒で心不全リスクを推定する技術を開発

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AMI株式会社と熊本大学大学院生命科学研究部 循環器内科学を中心とする研究グループは、心臓の音と心電図からAIでわずか8秒で心臓の状態を推定する新技術を開発した。この成果は医学専門誌「Circulation Journal」に掲載された。

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心不全は高齢者が特に多く、再入院や死亡率が高いことが問題とされている。心不全は早期に発見して、適切な治療を行うことが大切だが、これまでの診断方法には課題があった。特に、血液検査でBNPやNT-proBNPという物質を測る方法は、時間がかかり、患者にとって負担の大きいものだった。

今回開発された技術では、わずか8秒間の計測でBNP値を推定することができる。この方法は非侵襲的かつ迅速で、患者の身体的・時間的な負担を大幅に軽減できることが特長だ。この技術は、AMI社が開発した心音と心電図を同時に測定できるポータブルデバイス「心音図検査装置AMI-SSS01シリーズ」と、AIの一種である「深層学習(ディープラーニング)」が組み合わせられている。

この研究は、BNPという心不全の診断に使われる重要なバイオマーカーの血液中の濃度を予測するための新しいモデル「eBNPモデル」の性能を評価することを目的として、複数の病院で行われた前向き観察研究なのだという。eBNPモデルの性能は、心臓の超音波検査を受けた患者を対象にしたデータでモデルを訓練して検証された。その結果、このAIモデルは高い精度でBNP値を推定できることが示された。

また、背景音(周りで話している声や呼吸音など)がモデルの予測に与える影響も調査された。結果として、通常の臨床環境における会話程度の背景音であれば、モデルの性能はほとんど影響を受けなかったのだという。ただし、音が非常に大きくなると、精度が少し低下したとのこと。

この研究結果から、eBNPモデルがBNPレベルを正確に予測する能力を持ち、心不全の診断において有用であることが示された。特に、実際の臨床環境でも高い精度を維持できることが確認された。このモデルが導入されれば、心不全のリスク評価が迅速かつ正確に行えるようになり、患者の診療に役立つ可能性がある。

将来的には、本技術を用いて心不全の早期発見や在宅でのモニタリングなどへの応用が期待できる。また、BNPは体格や腎機能、心房細動などの影響を受けやすいため、それらの因子を考慮したさらなるAIモデルの精緻化も進めていく。

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Top Image : © 熊本大学大学院 生命科学研究部

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