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2023.01.05

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大阪大学、生体骨のような新材料を開発─バイオハイエントロピー合金×レーザ金属3Dプリンティングで実現

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大阪大学大学院工学研究科の中野貴由教授らの研究グループは、レーザー金属3Dプリンティング(Additive Manufacturing:AM)法とバイオハイエントロピー合金(BioHEA)を掛け合わせることで、「高強度・高加工性・低弾性・生体親和性」を兼ね備えた骨代替可能な新素材の開発に成功した。

元来、骨代替バイオマテリアルでは、高強度と低弾性、高強度と高加工性はトレードオフの関係にあり、両立が難しい。また、生体親和性を兼ね備えた金属材料の開発も新材料開発の大きな課題だった。そこで中野教授らは、2017年から世界に先駆けてBioHEAの設計を開始し、ある程度の強度と生体親和性を示す材料の創製に成功。加えて、レーザ金属AM法の急峻な温度勾配による超急冷凝固が開発に有効なことを発見していた。

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開発した新材料は、従来開発の5元系BioHEAに対し、毒性の低いハフニウムを加えた、6元素(チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン)から構成する6元系BioHEAとなる。これにより混合のエントロピーが増加し、マクロな相分離傾向を低減できる。

また、レーザー金属AM法の超急冷現象により、本来は相分離(油と水のように複数の層に分離すること)傾向を示す合金を強制固溶(各元素が均一に溶け合った状態)で単相化することで、高強度性を実現した。

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強制固溶体化では、析出物のようなマクロレベルでの障害物が存在しないことから加工性が向上。レーザ金属AM法での超急冷と急峻な温度勾配により結晶の方位を制御可能となり、低弾性を実現できた。

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なお、ビーム条件により、多結晶での結晶方位や組織の制御も可能なほか、力学特性や弾性率も自在に制御可能。さらに、マクロ偏析(マクロレベルで合金の層が異なること)の防止により、生体用ステンレス合金よりもはるかに良好で、インプラント用金属材料に使われる純チタンに匹敵する生体親和性を実現できた。

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今回設計されたBioHEAでは、レーザ金属AMによりナノレベルからマクロレベルまで人為的に制御することが可能。本研究がナノレベルの原子結合が、マクロスケールでの力学特性制御へとつながる「カスタム力学機能制御学」の構築の糸口になることが期待される。

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Top Image : © 大阪大学大学院 工学研究科

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